どんな人にもわかりやすい、スローコミュニケーション

文章は難しい
「デフレ脱却のために規制緩和を実行し、戦略的成長を推進することが政権のアジェンダである」「大谷が甘く入ったスライダーを右に運んだ」。こうした新聞の文章は、政治や経済、野球についての知識をもたない人にとっては、とてもわかりにくいものです。新聞は限られたスペースに多くの情報を詰め込む必要があるため、「デフレ」や「甘く入った」が何を意味するのかという前提情報を省略してしまうことがその要因です。政府や役所が作る行政文書も同様で、クレームを回避するためにあらゆる情報を盛り込むため、抽象的で冗長な文章になる傾向があります。
スローコミュニケーション
新聞は小学校卒業程度の学力をもつ読者を想定して書かれるといわれていますが、大人であっても理解が難しいことがあります。ましてや、自閉スペクトラム症やADHDをはじめ、発達障害のある人たちにとってはなおさらで、学習や社会参加をさらに困難にしています。こうした課題に対して、近年では「スローコミュニケーション」という取り組みが広まっています。例えば既存のニュースの「書き換え」もその一環で、前提情報をしっかり説明する、比喩を避けて直接的な表現を用いる、ゆっくりと読み上げるなど、情報をわかりやすく伝えるための工夫が行われています。
インクルーシブな社会
スローコミュニケーションのような取り組みは非常に重要ですが、「障害者が健常者に追い付くこと」だけが良い社会をつくるのではありません。例えば、有名な映画監督や俳優、あるいはIT界の成功者の中にも、発達になんらかの障害を抱えている人は少なくありません。しかし、彼らがもつ「健常者」にはない特性は、誰にもまねできない偉業を成し遂げた要因の一つといえます。発達に障害のある人たちがどんな視点をもち、どんな発想をしているのかを理解することは、差別や偏見をなくすだけでなく、社会にこれまでにない発想を取り入れて、より豊かにすることにもつながるのです。
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