講義No.15359 経営学・商学

有事に中小企業はどう対応するか

有事に中小企業はどう対応するか

有事の備え「BCP」とは

大地震や新型感染症の流行といった有事への備えとして、「事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)」が重要です。これは、有事の際であっても重要な業務を止めないか、止まってしまったとしてもなるべく早く復旧させるために、あらかじめ組織的な対応方法をまとめておく計画のことです。

実際の有事では?

BCPの効果について、中小企業の「組織構造の変化」に着目した研究があります。大地震や新型コロナウイルス感染症の流行のもとで企業の舵取りを担った中小企業の経営者や、BCPの担当者へのインタビューに依拠したケース・スタディを通して「組織構造の変化」の実態に迫ったものです。
この研究では、大地震のような「過去に類似の事象を経験済みの場合」においては、経営者が自らに集権化し、自ら迅速に意思決定する傾向が見られました。一方で、新型コロナウイルス感染症の流行のように「その事象を誰も経験したことがない場合」では、経営者は権限を自らに集めるのではなく、現場に分散させて柔軟に対応する動きが確認されました。注目すべきは、その分権化の対象が専門家ではなかったという点です。日本の多くの企業では、仕事のスキルだけでなく、社内ルールや人間関係といったその企業特有の知識が重視されます。そのような日本企業の人材育成等のあり方が影響していることも示唆されました。

有事の対応も含め、企業の基礎はヒト

これらの視点からは、中小企業の事業継続において、人材採用や人材育成が極めて重要だということが見えてきます。これらが有事の対応力を左右すると考えられるからです。

【参考文献】
太田侑樹(2024).「事業継続計画に関する研究―不測の事態への対応に着目して―」『神戸大学大学院経営学研究科博士論文』pp.1-204。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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龍谷大学 経営学部 経営学科 講師 太田 侑樹 先生

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好きなことを大切にしてください。そして、その「好き」に対しては、手間や時間を惜しまないでほしいです。コスパやタイパを気にすることなく努力を重ねることで、大きなリターンが返ってきます。周囲と比べる必要はありません。自分のペースで、自分の道を進めばよいのです。大学には、知識豊かな先生や図書館といった、あなたの学びを深めるための環境が整っています。環境を存分に生かして学び、それをあなたの強みに変えることで、大きなリターンを得ていきましょう。

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