患者の気持ちを受け止める看護の技術

言葉を受け止める技術
看護の出発点は、人に興味を持ち、相手をよく観察し、思いやることです。相手の気持ちを理解して適切な対応をするには、自分自身の心を安定させて、感情をコントロールする力が欠かせません。一方で、看護の現場では患者から思いがけず厳しい言葉をかけられることもあります。病気やけがで体調が悪くなると、心にも余裕がなくなり、普段は言わないことを口に出してしまうこともあるからです。看護師にとって、そうした患者の感情を酌みながら向き合うことが、大切な役割の一つです。
相手の気持ちに気づく力
経験を重ねた看護師は、患者の言葉だけでなく、表情などから本当の気持ちを読み取る力を身につけています。こうした力の一つである「アサーション」は、相手の行動から気持ちを察して、相手を尊重しながら自分の思いを伝える対応方法です。これは生まれつきの能力ではなく、授業や実習を通して身につけていきます。例えば大学1年次の授業では、飲食店の注文が通っていなかったときのような、日常生活の中で想像しやすい場面を題材にグループワークを行います。さまざまな意見を交わすことで、同級生でも考え方が違うことに気づき、身近なところから多様性の理解を深めていきます。さらに臨床実習でさまざまな年代や病状の患者と出会うことで、より広い視野で相手を理解する力を育てていきます。
心を通わせる看護
患者の気持ちに気づき、それを受け止めるには、直接的な触れ合いが欠かせません。近年では電子カルテや最新の医療機器が導入され、看護のIT化が進んだことで迅速で正確な対応ができるようになりました。しかし、もし看護師がずっとパソコンの画面ばかりを見ていたら、患者は「私のことを見てくれていない」と感じるかもしれません。だからこそ、目を見て話す、そっと手を添えるといった、相手と心を通わせる関わりがとても大切なのです。テクノロジーがどれだけ進んでも、人の気持ちを感じ取り、寄り添う看護の本質は変わりません。
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