「もうかる」ってどういうこと? 会計学が解き明かす「利益」

利益=現金ではない
企業にとっての「利益」とは、売上から仕入れ値を差し引いて手元に残る現金と考えられがちですが、正確にはこれは「収支」にあたります。利益とは、「企業が生み出した価値」を測るためにつくられた物差しです。
例えば、あるモノを売って、その代金が3カ月後に振り込まれるとき、企業はいつ価値を生み出すのでしょうか。また、使用している設備について、その価値をどう計算するべきなのでしょうか。
利益は、現金収支のタイミングではなく、企業が活動し、関連するモノなどの価値が増加したときに収益を、価値が減少したときに費用を記録し、その差額を利益と言います。
歴史と現在
「利益」という概念が必要になったのは産業革命以降だとされています。この時代から「株式会社」がつくられるようになり、出資者に向けて、会社の活動や価値を正確に伝える必要が出てきたのです。例えば、大きな機械を導入し、5年間にわたって生産を行う場合、機械の費用を1年目だけでなく、5年目まで割り振って計算する「減価償却」という考え方も、こうした背景から生まれました。
2000年以降は会計基準が大きく変化して、日本でも海外の基準に合わせて大きな変更が行われました。例えば原子力発電所の会計では、将来施設を取り崩して、更地にして戻すためのコストも建設費用に含まれるようになりました。前述の機械の事例とは反対に、将来のコストを計算して減価償却が行われるようになったのです。
会計学の役割
現在の会計基準においては複数の計算方法が認められており、同じ事業でも計算の仕方によっては異なる利益が算出されるケースもあります。さまざまな考え方や、経済的環境の変化を踏まえながら、企業の動きを最もよく表せる利益の測り方を考える学問を会計学といいます。その研究成果は、会計基準を作る上でも大いに役立てられており、日々の経済活動を裏で支えているのです。
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