講義No.15489 観光学

人はなぜ旅をするのか 観光の本質を考える

人はなぜ旅をするのか 観光の本質を考える

旅行の目的

コロナ禍が収束した後、日本には海外から多くの観光客が訪れるようになりました。円安をはじめ、その要因はさまざまに考えられますが、彼らが日本を訪れる理由は一つではありません。初めて訪日する人たちは、有名なお寺や神社を見学し、すしやラーメンを食べるなど、「日本らしい」モノやサービスにお金や時間を費やします。一方何度も日本を訪れる人たちは、日本の文化や暮らし、歴史への関心を深めて、伝統工芸の体験や、観光地から離れた田園風景を散策する「コト消費」へと、関心がシフトする傾向が見られます。

オーバーツーリズム

京都や東京、金沢などでは、街のキャパシティを超える観光客が訪れるオーバーツーリズムが問題になっています。地域の電車やバスが定員オーバーになったり、自宅を写真に撮られたり、街中にごみを捨てられたりと、そこに暮らす住民の生活が侵害されるケースが数多く見られます。また、宿泊・飲食といった一部の業界はより高い収益が見込めますが、あまりに多くの観光客を受け入れるとサービスの質が下がり、満足度も低下するという危機感を抱く人たちもいます。旅行者の目的や行動が一つではないように、それを受け入れる地域の姿勢や考え方も、さまざまなのです。

観光学という学問

観光学は、日本のインバウンドを含めて「観光」について考え、経済学や街づくり、心理学など多様な学問の知見が集まる学際的な学問分野です。例えば北陸新幹線が延伸したことで沿線地域の経済がどのように変わるのか、またアニメの聖地巡礼や音楽フェスなど、若者文化の影響を受けて観光のあり方がどう変化しているのかなど、旅や街、そしてその主体となる人について、多様な視点から捉え、さまざまな学問の手法を用いて考えます。そこで得られた発見は、地域の観光や経済の活性化に役立てられるだけでなく、「人はなぜ旅をするのか」という、より本質的な問いについて考えるヒントももたらしてくれるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

福井大学 国際地域学部 国際地域学科 講師 江川 誠一 先生

福井大学 国際地域学部 国際地域学科 講師 江川 誠一 先生

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観光学、地域研究

メッセージ

大学に入ったら「社会的に正しい」「はやっている」といった理由ではなく、「自分が本当に好きなこと」を追究してほしいです。それがアニメやコスプレといったテーマでも構いません。まだ社会的に価値が見いだされていない、学問的に異質だとされているテーマでも大歓迎です。「くだらない」と言われがちなことでも、それを大真面目に探究する学生を歓迎しますし、真剣に取り組むことで、社会との接点や世界に影響を与えるような何かに、自然につながっていくはずです。

福井大学に関心を持ったあなたは

本学は教育学部、医学部(医学科、看護学科)、工学部、国際地域学部の4学部からなる国立大学です。「創造力、実践力」をキーワードに、本学で学んだ学生が生涯にわたって創造力や指導力を発揮できるよう、学びの力となる学問の基礎及び方法の習得をめざします。先端研究に支えられた教育内容と、不断の省察による教育技術によって、学生がそれぞれの個性に目覚め、社会に貢献できる実践的知識と技術を習得して卒業する事を目標とします。就職率は複数学部を有する国立大学で18年連続ナンバー1の実績があります。(H19-R6年度)