上演芸術に欠かせない「世界観」を作る!

舞台美術は「創造空間」である
「世界観に引き込まれる」という表現がありますが、「世界観」とはどう作られるのでしょうか。演劇やミュージカル、伝統芸能などの上演芸術において、世界観を構成する要素の1つが舞台美術です。舞台美術とは、わかりやすく言うと大道具、小道具、背景画を用いて舞台上に作る情景のことで、具体的には風景、建物などのセットを指します。そこに照明、音響、映像などが組み合わさると、作品のコンセプトに沿う「空間」ができあがります。そして、その「空間」で衣裳やメイクを施した「演者」が演技し、「観客」がその空間を観ることで、物語や世界観を届けることができます。舞台美術デザインにおいてセットを作ることはプロセスに過ぎず、空間・演者・観客の3要素がそろったときにはじめて完成を迎えるのです。
知識と経験がアイデアを生む
舞台美術デザインでは、作品に関するスタディ&リサーチが欠かせません。時代背景や、歴史・建築様式・風土・生活様式、色彩イメージなどを十分に理解し、知識の土台があってはじめて、自分なりのデザインコンセプトをイメージできます。形なきものを形にするための創造力も大事ですが、0から1を生み出すのは至難の業です。また日常や旅先で気になったもの、映画や美術などの鑑賞体験を、引き出しとして蓄えておくことが求められます。
上演芸術は続く
舞台美術表現のベースは木材と絵具で作られた大道具です。上演芸術ではほかにも人の力を要するアナログな手法が多く使われており、それが唯一無二のライブ感を演出します。今後AIやCGなどのIT技術がさらに発展しても、「大勢の人の相互作用で成り立つ総合芸術」の根幹は変わらないため、次世代の技術継承者を育成する意識は必須です。またライブだからこそ、よい作品を届ければ、拍手というわかりやすい評価が返ってきます。拍手を糧に、観客に感動を伝え、よりよい上演芸術作品へとつながっていきます。
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先生情報 / 大学情報

多摩美術大学 美術学部 演劇舞踊デザイン学科 教授 金井 勇一郎 先生
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先生への質問
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