病院にデザインを取り入れることで、治療効果が上がる?

医療とデザインの融合をめざして
絵画や彫刻などのアート、また情報伝達を主目的にしたデザインに対して、主に「製品」に施されるデザインをプロダクトデザインと呼びます。病院で使用される器具や衣服、照明などのデザインもプロダクトデザインであることから、2024年に美術大学と医科大学との包括連携協定により、医科大学内に「メディカルデザイン研究所」が開設されました。これは、医療現場におけるQOL(生活の質)向上をめざして、美術やデザインの考え方を病院内のサービスや器具などに取り入れていくための組織です。
病院でのデザイン
これまで病院で使用される製品は、機能性を最優先としてデザインされており、ファッション性やアート性は重視されてきませんでした。しかし、患者に安心感を与えるデザインや気持ちが明るくなるデザインを実現できれば、治療効果にも良い影響を及ぼすでしょう。例えば包帯は通常真っ白ですが、もっとおしゃれに、柄や色を付けるなどの工夫はできないかといったことを、機能面を考慮しながら検討していきます。
また、病院に彩りを与えるだけでなく、例えば日本語のわからない外国人の利用者に対して言語以外のコミュニケーションでサポートする問診票など、医療現場におけるデザインには、まだまだ工夫の余地があります。
デザインはどんな分野とでもつながる
メディカルデザイン研究所の影響として、医療従事者の中にデザインやアートに対する関心が増したという報告があります。これまで意識してこなかった「デザイン」にあらためて向き合い、患者に対する有用性を認識することにつながっています。これが将来的には、「アートに理解のある医療従事者」を増やすことにも直結します。
こうしたことは医療分野以外でも同様で、デザインが重視されてこなかったさまざまな職種、学問分野に、デザインという考え方をより取り入れていくことができます。デザインとは、あらゆる領域とつながる大きな可能性を持つ分野だと言えるでしょう。
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多摩美術大学 美術学部 生産デザイン学科 プロダクトデザイン専攻 教授 安次富 隆 先生
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