再生医療の可能性も! 「弾性繊維」と加齢との関係

伸び縮みする弾性繊維
皮膚には弾力があり、指で押しても離すと元に戻ります。これはゴムのように伸び縮みする「弾性繊維」の働きです。弾性繊維は肺や血管、眼など体のさまざまな部位にあり、重要な役割を担っています。呼吸のたびに肺が風船のように膨らむのも弾性繊維があるからです。眼には水晶体という柔らかなレンズがあり、ものを見るときにはレンズの厚さを変えてピントを合わせています。その厚さを最終的に調節するのも、レンズを囲んでいる弾性繊維です。しかしゴムのような性質は、年齢とともに弱っていきます。老眼とは加齢で水晶体が硬くなりピントが合わなくなることをいいますが、周囲の弾性繊維の調節力が弱くなることも関係していると推測されます。
部位によって分子は違う
なぜ加齢とともにゴムの力が失われるのか、弾性繊維の性質を調べる研究が進んでいます。弾性繊維を作る細胞は部位によって違うことがわかっています。眼では毛様体にある上皮細胞、皮膚では真皮にある線維芽細胞という全く由来の異なる細胞が、フィブリリン-1、フィブリリン-2という弾性繊維の骨格となる大きな分子を分泌します。そこに小さな分子がどんどん結合して弾性繊維が作られていきますが、年齢とともに小さな分子が結合しなくなるのです。この小さな分子も、部位ごとに違うことがわかってきました。
新しい医療につながる地道な研究
動物の細胞をシャーレで培養し弾性繊維を作らせて分析したところ、眼ではMAGP-1という分子が、皮膚ではファイブリン-4という分子が関連していることがわかりました。肺では目や皮膚の関連分子を含むさまざまな分子が関わっていました。こうした違いの存在には何らかの意味があるはずです。
弾性繊維を生化学的に分析するには、溶かして分子を抽出する必要がありますが、繊維が溶けにくいことが障害となって、未知の部分がまだ多くあります。今後の研究で関連分子の性質が明らかになれば、失われた機能を再生する医療につながっていくでしょう。
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弘前大学 医学部 保健学科 教授 敦賀 英知 先生
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