歩けなかったヤギが再び歩く 動物の高齢化を支える装具療法

動物の脚を支える
動物園で飼育されている動物たちも、歳を取ると体に不調が現れます。ある動物園では、加齢により脚が曲がり、立つことが難しくなったヤギがいました。草食動物は立たないと排せつも反すうもできず、生き続けるのが困難になります。そこで、人間のリハビリでも使われる装具をヤギ用に作って脚を支えることにしました。革やサポーター生地など柔らかい素材を使い、ヤギが嫌がらないよう工夫を重ねたことで、装着したヤギは立ち上がり、なんと歩けるまでになりました。理学療法は動物たちの生きる力をも引き出せるのです。
動物の体に合わせた装具を作る工夫
動物に装具を作るには、人間とは違った難しさがあります。まず、大きな壁となるのが動物とのコミュニケーションです。動物は「痛い」「動きづらい」と言葉で伝えることができません。そのため、装具をつけた後の歩き方やしぐさを細かく観察して、見た目に違和感がないように微調整を重ねる必要があります。
また、フィットする装具を作るためには、最初に脚など対象部分の型を取る必要があります。しかし動物は、型取りの作業を怖がり、暴れてしまうこともあります。そこで、インソールの製作に使われるフォーム材を活用することで、短時間で正確に型を取れるようになりました。
動物への理学療法の未来
医療の発達によって人間の寿命が延びるのと同様に、動物園の動物たちも長生きするようになりました。その結果、関節や筋肉に不調を抱える高齢の動物が増えています。しかし、人間やペットのように医療費をかけられない現実もあることから、理学療法を応用して動物たちの自立した動きを支援することは、動物福祉の面からも非常に重要です。
今後はリハビリの成果を、歩けるようになった距離などのデータで示すことが求められています。AIを活用した動作解析や評価システムの開発も視野に入れ、動物向けの装具療法はより科学的で実践的な段階へと進化するでしょう。
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帝京大学 福岡医療技術学部 理学療法学科 講師 壇 順司 先生
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