「ストレス×ストレス」はノンストレス? 酵母に働いてもらうには

暑さが大敵
酒づくりやバイオ燃料生産といった発酵産業においては、酵母に効率良く働いてもらわなければなりません。そのためには、酵母がどんな環境で、なぜストレスを感じるのかを明らかにする必要があります。
酵母にとってのストレスの一つは高温です。バイオ燃料生産現場などでは、温度上昇に伴い酵母の働きが止まってしまうことがあります。酵母が快適に過ごせる温度は25℃~30℃なのに対して、東南アジアのように気温の高い地域では、冷却設備が不充分であったり冷却コストがかさむという問題があります。
ストレスが2つで元気に?
これまで高温ストレスで動きが止まる原因は、主に酵母の細胞のタンパク質の変性だと考えられていましたが、最近の研究により、浸透圧のバランスが重要なことがわかってきました。高温下で浸透圧を上昇させると、酵母が元気になるという現象が実験によって確かめられたのです。高温では、酵母が栄養源を取り込んで分解すると細胞内の浸透圧が上昇し、高温下では過剰に上昇して内外のバランスが崩れることで、動きを止めてしまうと考えられました。そのため、外部浸透圧を上げることでバランスが回復し、酵母が楽になるのです。高浸透圧も酵母にとってはストレスと考えられていたため、これは意外な結果でした。
従来、ストレスの課題解決は、「ストレス要因を減らす」「酵母のストレス耐性を上げる」といった方向で研究が進められてきました。実は「環境とのバランスを取る」ことが鍵となるかもしれません。
酵母はどこにでもいる
「生活環の一部または大半を単細胞で生育する真核生物」を酵母と呼びます。自然界には2,000種類以上の酵母が存在しており、食品に使われるもの以外にもたくさんあります。酵母は自分では移動できず、風や人の手などによって運ばれ、たまたま落ちた場所で生きています。どの酵母がどんな環境を好んでいるのかといった生態は、まだほとんどわかっていません。それを明らかにするため、さまざまな場所から野生酵母を集めて調べる研究も進められています。
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