最高の赤身肉を作る! 筋線維型の違いに着目

ヘルシーな赤身肉の短角牛
日本の肉用牛の95%以上は霜降り肉が特徴的な黒毛和牛です。一方で、主に北東北で飼育されている短角牛は茶色い毛の品種で赤身の肉質をしています。
飼料に輸入のトウモロコシや大豆が必要な黒毛牛に対して、短角牛は牧草や稲わらなど国産の粗飼料が利用可能で、また病気に強く放牧飼育できるため手間がかからないといった利点もあります。しかし、現在の肉の格付け評価はサシ(霜降り)の入り方が基準なので、赤身肉の短角牛は高評価が得られません。そこで、サシに頼らない評価方法の提案とともに、肉質をさらに向上させる研究が行われています。
遅筋の方がよりおいしい?
肉質向上で着目されているのが筋肉の筋線維です。筋肉には、持久力に優れた遅筋と瞬発力に優れた速筋の2つの筋線維型があります。例えば魚では、遅筋はマグロなどの回遊魚、速筋はヒラメなどの居着き魚に多く含まれています。化学的な分析により遅筋のほうがうまみ成分や水分が多く、日本人に好まれやすい味であると考えられ、短角牛の遅筋を増やす試みが取り組まれています。
マウスの実験では、キイチゴに含まれる香り成分の一種であるラズベリーケトンに、遅筋の割合を増やす作用があることがわかりました。秋田県ではキイチゴの生産に力を入れており、剪定(せんてい)した葉や茎を飼料に利用できます。また、リンゴのジュースの搾りかすやキノコを収穫したあとの廃菌床などにも同様の成分があるとされ、秋田県の未利用資源の活用が期待されます。
血液検査でチェック
ほかにも、マウスにアペリンという内分泌ホルモンを投与すると遅筋が増えることがわかりました。これは体内でアペリンが分泌されると遅筋が増えることを示唆しています。つまり、数年かけて育てた牛を解剖して調べるまでもなく、血液検査でアペリンの濃度を調べれば遅筋の増加がわかる指標になると期待できます。今はまだマウス実験の段階ですが、遅筋の豊富な赤身肉育成法の確立をめざして研究が進められています。
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秋田県立大学 生物資源科学部 アグリビジネス学科 准教授 佐藤 勝祥 先生
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