仲が悪いものを混ぜると宇宙で役立つ? 水と油を混ぜる研究

仲が悪いものを混ぜると宇宙で役立つ? 水と油を混ぜる研究

仲が悪いものを混ぜると?

「仲が悪い」ことの比喩として使われる「水と油」は、交じり合わないものです。例えばセパレートドレッシングは、よく振ると油の粒が細かくなって均等にちりばめられますが、時間がたつと水分と油分が分離します。これは、油の粒が細かくなると、水が油の粒を抱えやすくなるものの、時間とともに分離する性質があるからです。
一方、マヨネーズも水と油が混ざっていますが分離しません。これを「乳化」と言い、乳化したものを「エマルション」と言います。卵の中のレシチンという成分に、水と仲がいい「親水性」と油と仲がいい「親油性」の両方の性質があり、油の細かい粒をそのまま均等に水の中に分散させておくことができるのです。このレシチンのような物質を「乳化剤」「界面活性剤」と言います。乳化剤や界面活性剤は、5000年前から人類が使ってきたこともわかっています。

超音波による乳化技術

現在、洗剤などに使われている界面活性剤や、化粧品の乳液などに使われている乳化剤は、東南アジアで栽培されるアブラヤシからとれるパーム油が原料としてよく使われています。しかし、パーム油の生産が現地の環境破壊につながることや、一部の乳化剤や界面活性剤に人体や環境への悪影響の懸念があるなど、問題になっています。
そこで、超音波を水の中にある油(または油の中にある水)に当てて粒を小さくし、乳化する研究が進んでいます。これにより、乳化剤を使わずエマルションを作ることができるようになりました。今後、医薬品や化粧品、食品の分野で活用される見込みです。

宇宙で洗濯するために

乳化剤や界面活性剤を使わない乳化技術のメリットは、乳化した後でも水と油の分離がしやすいことです。そのため、水が貴重な宇宙で、水をリサイクルできる界面活性剤不使用の洗浄剤の開発が進められています。将来、宇宙で暮らす時代に向けて期待されているのです。

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先生情報 / 大学情報

信州大学 工学部 物質化学科 教授 酒井 俊郎 先生

信州大学 工学部 物質化学科 教授 酒井 俊郎 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

界面化学、コロイド化学、超音波化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

水と油を混ぜるとおいしいドレッシングやマヨネーズになるように、「仲が悪いものを混ぜる」「異分野に入り込む」と、何か幸せなことが生まれると思っています。私は「水と油はなぜ混ざらないんだろう」と、当たり前を疑いながら、また「混ぜると幸せになるのに」と思いながら、水と油を混ぜる研究をずっとやってきて、史上初の技術を開発することができました。あなたも、「当たり前」「常識」を疑ってください。見えるものを「当たり前」と受け入れるだけでは、新しい発見はないのです。

先生への質問

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