誰も知らない生物由来の有機化合物が、未来の薬のタネとなる!

生物由来の物質は薬や農薬のタネ
生物の体の中にはさまざまな天然の有機化合物(天然物)があり、生体内でそれぞれ役割を担っています。世界中の研究者たちが天然物の複雑な構造を分析し、それらの役割を理解しようと努めています。まだ誰にも知られずひっそりと生物の中に潜んでいる天然物の中には、人間の生活に役立つものがあるかもしれません。生物から未知の天然物を探し出し、その生理活性や構造を解き明かすことは、宝探しのようなものです。新しい天然物には、新しい医薬品や農薬などのタネになる、果てしない可能性が眠っています。
「マスタケ」から新規化合物を発見
自然界にはさまざまな生物がいます。天然物化学者にとっては、まだあまりよく知られていない生物ほど、新しい天然物を見つけられる可能性を秘めた宝の山です。
例えば「マスタケ」というキノコには、その抽出物に抗酸化作用があることが知られています。そのマスタケから抗酸化活性のある物質を単離して構造を分析してみると、α-D-リボフラノシドという五炭糖由来の構造を持つ未知の天然物であることが明らかになりました。新しい天然物を発見した人には、その天然物に名前を付ける権利が与えられます。長野県伊那市で採られたマスタケであったことから、その天然物は「イナノシド」と名付けられました。
応用のための有機合成
医薬品のおよそ半分は、天然物に由来しています。しかし、生物から抽出されたそのままの天然物が医薬品として使われることはまれで、ほとんどは有機合成技術で改良し、人工的に合成された化合物が使われています。天然物のうち活性のある部分だけを合成できれば、効率よく大量に生産できるからです。新しい天然物を発見することだけでなく、初めて人工的な合成に成功することも、構造や機能を解析し応用の可能性を探る重要なステップです。コツコツと重ねる基礎研究の先には、その天然物が医薬品や農薬などに活用されるようになるかもしれない未来が広がっているのです。
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