社会の動きを数字で読む コロナ禍から考えるデータサイエンス

感染症モデルは本当に社会を説明しているか
新型コロナウイルスの感染拡大の際、国によって対策の内容や強さが大きく異なっていました。日本でもさまざまな感染拡大対策が行われていましたが、その強弱の変化と感染者数の推移が必ずしも対応していたわけではありません。こうした状況のもとで、感染拡大の勢いが維持されることを前提とした数理モデルは、実際の推移を十分に説明できていない可能性がありました。このことは、「数理モデルが本当に社会を説明するものになっていたのか」という疑問につながります。社会の現象を数式で表す際には、前提となる仮定が現実に合っていなければ、予測や解釈が大きくずれてしまうことになります。
データが示した違和感
日本の感染データを詳しく見ると、感染者数の増え方には特徴的な変化が見られました。データは、感染が広がる「増加速度」が次第に低下することを示していました。こうしたデータに対して、感染が広がり始めるとその勢いが一定程度維持されることを前提とした数理モデルは、十分に適合しないことがわかりました。この結果は、「強い行動制限がなければ必ず感染が急拡大する」という単純な見方が成り立たない可能性を示唆しています。どのモデルを用いるかによって、同じデータから導かれる結果の解釈が大きく変わってしまう点は、社会現象を扱う際の重要な特徴です。
データで考え方を更新する
社会の現象が物理現象と異なるのは、個々が「意思」を持って行動する点にあります。感染症の広がりも、人々が情報をどう受け取り、どのように行動を変えるかによって左右されるため、数理モデルでは何を取り入れて、何を単純化するかという判断が重要になります。だからこそ、既存のモデルが分析したい問題に「本当に適しているのか」を確かめ続ける姿勢が欠かせないのです。大量のデータが得られる現代では、こうした検証を重ねることで社会の見方を更新していくことができます。データサイエンスは、社会の現象を数字で捉え、「よりよい見方」を探し続ける学びなのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報

![選択:[SDGsアイコン目標4]](https://telemail.jp/shingaku/requestren/img/data/SDGs-4-active.png )


