おなかが空いていると何でもおいしく食べられるのはなぜ?

おなかが空いていると何でもおいしく食べられるのはなぜ?

食べ物の好みが変わる

空腹時にいつもより食べ物がおいしく感じたことはありませんか。また、子どもの頃苦手だった食べ物が、成長して好きになったという経験がある人もいるでしょう。どの食べ物を好むかは、味や香り、見た目などから決まると考えられています。しかし食べ物の好みやおいしさの感じ方が変化する仕組みはまだよくわかっておらず、解明のための研究が行われています。

空腹時は好みが調節される

マウスを対象にした実験で、空腹時に働く神経が味の好みの調節に関わっていることがわかってきました。マウスも人と同じで、空腹であればおいしくない餌も食べますが、そうでなければおいしい餌しか食べません。ところが、光遺伝学などの手法を用いて、空腹時に働く神経を刺激して活性化させると、空腹でなくてもおいしくない餌を食べるようになります。また、より甘いものを好むようになりますが、これは甘いものは一般的にカロリーが高いためだと考えられます。また、苦みや酸味は腐ったものや毒の入っているものに多いので通常は避けますが、空腹時には多少の苦み・酸味があっても食べるように好みが調節されるようです。

いまだ謎が多い食行動

食べ物の好みは、味や香りなどの感覚だけで決まるのではなく、腸で感知された栄養の情報という、意識できない要素も関わっているらしいことがわかってきました。嫌いだったものが好きになる理由の一つは、腸から脳に伝わる栄養の情報によって、その食べ物を受け入れられるようになるためだと考えられ、さまざまな栄養素と体の関係が調べられています。
食べ物の好みに関する仕組みの解明は、肥満抑制や健康維持につながると期待され、人にも当てはまるのかどうかについて、検証が進められています。ほかにも、ストレスを感じると食べ過ぎてしまう人と、逆に食欲がなくなってしまう人がいるといったストレスと食行動の関係や、味覚と嗅覚の情報が脳内でどのように関係しているのかなども研究されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

名古屋大学 農学部 応用生命科学科 食理神経科学研究室 教授 中島 健一朗 先生

名古屋大学 農学部 応用生命科学科 食理神経科学研究室 教授 中島 健一朗 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

神経科学、応用生命科学、栄養学

メッセージ

身近な疑問の中にも研究テーマはたくさんあります。その代表が体と食べ物の関係です。病気の治療に直接関わる研究は多くなされているものの、健康な状態の体が食べ物に応答する仕組みはまだわからないことが少なくありません。食べ物は薬のように劇的な効果を体にもたらすものではありませんが、毎日の食事を通して体に影響を与えます。薬を使うようになる前に食事で健康を維持・改善できれば、医療費削減にもつながり、社会的にも重要です。ぜひ教科書に載っている問題だけでなく、食べ物のような身近な疑問にも目を向けてみてください。

名古屋大学に関心を持ったあなたは

名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。