電子カルテのデータを集合知に 機械学習で治療方針を分析

治療の流れは患者で異なる
同じ病気でも、治療の流れは患者の状態によって大きく異なります。肺がんを例にとると、CT検査や血液検査の結果次第で、放射線治療か、手術に進むのかが変わります。こうした治療法の選択は医師の経験に頼るところが大きく、他の病院でどのような治療が行われているかを参考にする手段も限られていました。
そこで、各病院の電子カルテのデータを情報技術で分析し、病気ごとの治療方針の傾向や最適な治療の流れを明らかにしようという研究が、医療現場と情報工学の連携により進んでいます。
電子カルテから傾向を抽出
電子カルテのデータは記録の欠損が多く、そのままでは分析に使えないため、研究は、機械学習などを用いてデータを補完する前処理が重要な柱になっています。さらに、「シーケンシャルパターンマイニング」という技術を使うと、ある疾患でどのような治療の流れが多く選択されているかを抽出できます。
この手法は「なぜその結果になったのか」という理由を説明できる点で、ブラックボックスになりやすい従来の機械学習と異なります。複数の医療機関のデータを用いて、入院期間や費用の異なる複数の治療プランを導き出すことも可能です。将来は、データに基づいて医師が患者に治療プランを説明したり、複数のプランから患者が選択したり、研修医の教育や医療機関運営の効率化に役立てたりすることが期待されています。
プライバシー保護が重要課題
医療データの活用は、プライバシー保護という課題が伴います。解決の一つの鍵となるのが「差分プライバシー」という技術です。データにわずかなノイズを加えることで、個人の特定を防ぎながら分析ができます。ただし、データ数が少ないとノイズの影響が大きくなり、分析の精度が損なわれます。そのため、どれくらいデータを集め、どの段階でどれほどのノイズを加えるかは重要な研究テーマです。プライバシー保護と分析精度の最適なバランスを見つけることが、医療データ活用の突破口となるのです。
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