未知の分子を誕生させて医療技術に貢献!

新しい構造の分子を「つくる」
原子の種類や結合の仕方をわずかに変えるだけで、分子の性質が大きく変わることがあります。この手法で、新しい構造の分子を合成し、その性質や機能を解き明かしていく研究が行われています。
研究の素材として特に重視されている有機化合物が「芳香族化合物」で、中でもベンゼン環と呼ばれる六角形の安定した骨格を持つ化合物です。ベンゼン環を基本パーツとして組み合わせたり、変形させたりすることで、これまでに存在しなかった機能を持つ新しい分子の誕生をめざしています。
ベンゼン環を一部置き換えると?
ベンゼン環の炭素原子の一部を、窒素とホウ素のペアに置き換えると、性質ががらりと変わり、「似て非なる分子」が生まれます。この窒素・ホウ素(BN)骨格を組み込んだ分子は、蛍光の発光効率が大幅に上昇することがわかりました。また、液体の状態では全く光らないのに、固体にすると約60倍もの蛍光を放つ分子も発見されました。さらに、酸化によって光り方や色が変化する分子も見つかっています。このような周りの環境によって光り方が変化する分子は、モニタリング技術に活用できます。例えば、体内で酸化反応が起きている場所を光らせる可能性があり、医療診断技術への応用が期待されています。
ナノサイズの設計
輪の形をした分子を作る研究も進められています。例えば、直径1nmほどの輪の内側に硫黄原子6個が並ぶ分子が作られました。この分子は、炭素原子がサッカーボール状に結合した「フラーレン」を選択的に捕捉できます。外部環境の変化によって硫黄原子と炭素原子の相互作用が切断されると、フラーレンの放出が可能になります。さらに、この輪っか状の分子を縦や横に連ねることで、ナノメートルサイズの「筒」や「膜」を作成できます。生物の体内にも、イオンを透過させる膜タンパク質など、ナノサイズの似た構造が存在することから、人工的にこうした構造をつくることができれば、また新しい医療技術が実現できるでしょう。
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