一度焼いて復元する 木炭彫刻が表現する独特の世界

ばらばらに崩れてから再構築
立体造形のアート作品には、さまざまな素材が使われます。木材はもちろん、紙、金属、ガラス、粘土、陶器、プラスチックなどの加工品まで、造形技術を用いて作品が作られています。
その中でも「木炭彫刻」はとても珍しい素材の一つです。木炭は日本で古くから燃料として使われているほか、芸術分野ではデッサン時の描画用具として使用されています。木炭で造形される木炭彫刻の手法は、まず木材を彫って彫刻作品を作り、酸素を遮断した状態で、500~600度の高温で加熱します。すると木は燃え尽きず炭化しますが、形は崩れてばらばらになります。それを立体パズルのように一つ一つ丁寧に復元、再構築して仕上げていくのです。
茶道の文化、わびさびの哲学に通じる
この技法は、茶道の世界で木の実などをそのまま炭にして鑑賞する「お花炭(おはなずみ)」という伝統文化から着想を得ています。焼成時に一度壊れることを前提に彫刻を作り、再構築するほか、展示中にさらに破損しても修復できるのが木炭彫刻の特徴であり、その背景には物事は不変ではないという仏教的な無常観があります。燃えて灰になる手前のはかなさや美しさも加わり、「わびさび」の哲学に通じるところも、木炭彫刻の魅力の一つです。
木のままの彫刻にはない、木炭の質感や多孔質の風合いが独特の美しさや世界観を生み、木製とはひと味違ったアート性があるのです。特に木の種類によって、炭化したときの表情が異なり、ケヤキやエノキ、柿の木などの落葉広葉樹はその特徴がよく出ます。
地域の樹木を活用
新潟県十日町市を中心とした越後妻有地域では、土地の樹木をサンプリングした木炭彫刻作品の制作や巨大な壁面作品の展示が長年行われています。地域の樹木の豊かさを伝える活動であり、樹種によってどのような特徴が出るのか、経年による変化や風化、修復技術などの研究も進められています。
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常葉大学 造形学部 造形学科 教授 山本 浩二 先生
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