まだ十分に描かれていない「看護学そのものの履歴書」をつくる仕事

看護学は、どのように形づくられてきたのか
看護には長い実践の歴史があり、「看護史」や「看護教育史」に関する研究も積み重ねられています。しかし、看護学がどのような社会的・学術的背景のもとで成立し、どのような理論や概念、研究方法を取り入れて現在の姿になったのかを系統的に振り返る「学問史」は、まだ十分に整理されているとは言えません。
海外の理論が翻訳され、教科書や教育、看護記録へ広がる中で、当然のものとして定着した例もあります。看護学の今後を考えるためにも、知識・理論・方法が形成された過程を丁寧に見つめ直す必要があります。
人間の反応は、学問の対象になるのか?
看護学は、「人の反応や感情」という複雑な事象を対象とする、実践的で挑戦的な学問です。病気や障害、治療、環境の変化に対し、人が何を感じ、考え、どのように行動し生活するのかを扱います。
しかし、人の反応は一人ひとり異なり、家族や仕事、経済状況、経験によっても変化します。そのため、「人間の数だけ答えがあるものを、本当に学問として扱えるのか」と問われることもあります。けれども、簡単に数値化できず、同じ答えが出ないからこそ探究する価値があります。看護学は、複雑で変化する人間を単純化せずに理解しようとする学問なのです。
看護学は、ほかの学問を牽引する存在となる!?
これまで多くの学問では、人間は合理的に判断し、利益の大きい選択をすると考えられてきました。しかし、人間の行動は複雑で、従来の理論だけでは説明しきれないことも明らかになっています。他分野の研究者から、「看護学は、ほかの学問が容易には手を出せないことに取り組んでいる」と言われることがあります。それは、人の痛みや感情などの「人間の反応」です。看護学は、長くこの難しい対象に向き合ってきました。世の中の研究の関心が人間の「個」や「ケア」へ向かう今、看護学が培ってきた、人間の反応を捉える方法や人へのアプローチは、ほかの学問を牽引する力になり得るのではないでしょうか。
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