災害時にも病院を止めないためには!?  病院のエネルギー最適化

災害時にも病院を止めないためには!?  病院のエネルギー最適化

災害で停電したら、病院はどうなる?

病院では、人工呼吸器や麻酔器、心拍モニタなど、多くの命を支える電子機器が使われています。これらはすべて電気がなければ作動せず、ひとたび災害などで停電が起これば、患者の命に関わる深刻な事態になる可能性があります。近年は地震などの大規模災害が頻発しており、病院機能の停滞が災害関連死を引き起こすケースも増えています。そこで病院では、電力送電網だけでなく、蓄電池、太陽光発電などの自家発電機や非常用電源を備えています。しかし、災害時にこれらの電源が十分かどうかをチェックする仕組みはまだなく、データに基づいて「どこを強化すればよいか」を見つける方法をこれから整えていく必要があります。

災害時、病院で電気はどう使われている?

災害時に電気が止まってしまうと、病院では命を守る医療機器が使えなくなり大変な事態になります。なかでも災害拠点病院は、地域の医療を支える大切な役割を担っており、非常用電源の確保が特に求められています。ところが、災害時に病院がどの程度の電力を、どの時間帯に、どのように使うのかという実態のデータは、ほとんど存在していません。停電でエネルギー管理システムがダウンしてしまうからです。そこで、実際に災害を経験した病院へのヒアリングと、平常時の電力使用データを活用した予測という二つの方法により、病院の「電力ニーズ」を詳しく把握する研究が進んでいます。

災害リスクを考慮した最適化とシミュレーション

この研究では、災害リスクに関するオープンデータを活用して、地域ごとの条件を入力することで、どの病院でも最適な電源構成をシミュレーションできる仕組みを構築しました。さらに、災害時の発電量と実際の電力消費量がバランスを保てるかを1秒ごとにリアルタイムで検証できる高精度なモデルも完成しました。病院だけでなく、避難所やデータセンターといった重要施設への応用も期待されています。これらを活用して、災害に対するこれまでよりも踏み込んだ備えが必要なのです。

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山口大学 工学部 機械工学科 准教授 上道 茜 先生

山口大学 工学部 機械工学科 准教授 上道 茜 先生

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機械工学、システム工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校1年生のとき、駅で電車を待っていた私はふと「電車が来るのは当たり前だけど、それって何でだろう?」と考えました。電車を動かすのに必要なのは、実は電気だということを改めて考えて、そこから「エネルギーってすごく大事なんだ」と気づいてこの道をめざしました。このように、自分の体験や疑問から生まれた気づきには、特別な力があります。今はインターネットを探せば答えがすぐ見つかる時代ですが、小さなことでもいいので、自分の頭で考えたことを大切にしてください。

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