紫外線から皮膚を守れ! 遺伝子研究が開く難病治療の可能性

DNAの修復機能
皮膚は、紫外線の影響をじかに受ける臓器です。紫外線は細胞のDNAに化学反応によって直接的に、あるいは活性酸素を介して間接的にDNAを傷つけます。
しかし人間の体には、傷ついたDNAを修復する機能が備わっています。研究の結果、約20種類のタンパク質(酵素)が関わるDNA修復プロセスがあることがわかりました。この中の3種類のタンパク質の機能が加齢で徐々に下がり、高齢者では半減することも判明しました。加齢で皮膚老化が進行し、がんになりやすくなる原因の一つが、修復しきれなかったDNAがたまっていくことだと考えられます。
この研究を基に、現在美容医療で行われているLED光照射の皮膚への影響を皮膚の細胞を材料に検証したところ、赤や青のLED光には修復機能の回復効果があることが、科学的に実証されました。
色素性乾皮症
こうした研究により、難病指定である遺伝性皮膚疾患、「色素性乾皮症」の解明も進みました。この病気は潜性遺伝で、日本人に多いのが「A群」と呼ばれるタイプです。紫外線に当たるとやけどのようになったり、神経障害を起こしたり、子どものうちからがんになりやすい特徴があります。研究の結果、その原因が、DNA修復に関わる遺伝子のうち「XPA」と呼ばれる因子の欠損であり、日本人の100人に一人が欠損XPAをヘテロで持つことがわかりました。
難病治療に希望が
長年にわたるさまざまな医学研究を基に、色素性乾皮症の治療法の研究が始まっています。その一つが遺伝子治療です。欠損している遺伝子をウイルスに組み込み、人に感染させて細胞内に侵入させることで、その遺伝子を補う治療です。また、遺伝子に異常があっても、強制的にDNA修復に関わるタンパク質を合成させる「リードスルー薬」の研究開発も始まりました。DNAを傷つける活性酸素を除去する薬の開発も進んでいます。
こうしたさまざまなアプローチによる、難病治療の可能性に期待が集まっています。
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大阪医科薬科大学医学部 教授森脇 真一 先生
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