もみ殻由来のスマホ部品? 廃材で作る高機能ナノカーボン

廃材から高機能炭素材料を
光り輝く最高硬度のダイヤモンドと、鉛筆の芯に使われる柔らかいグラファイト(黒鉛)のように、炭素は構造によって形態や性質が大きく変わる元素です。ナノレベルで特徴的な構造をもつ「ナノカーボン材料」は主にメタンガスから作られ、スマホや電池などさまざまなところに使われています。こうした炭素材料を農林業の廃材から作ろうという研究が行われています。キノコを栽培した後の廃菌床や間伐材、おから、もみ殻などを適切な条件下で熱処理して機能性の高い炭素材料ができれば、環境に優しく、農林業生産者の収入増にもつながります。
もみ殻からタッチスクリーン?
グラファイトは六角形の網状のシートが何層にも重なった構造をしており、そこから取り出した1シートをグラフェンと呼びます。このグラフェンはもみ殻から作れます。もみ殻は熱処理すると層状のグラファイトになりやすく、できたグラファイトの層の間にアルカリ金属を入れて層をはがし、グラフェンを取り出すという方法です。
グラフェンは電気伝導性が高く、光を97%透過する性質を持つことから、スマホのタッチスクリーンなどの「透明導電膜」への活用が期待されます。既存のものはレアメタルを含んでおり、これに代わる高品質な透明導電膜を作ることが目標とされています。
キノコのおかげで性能アップ
キノコの栽培には木チップなどの菌床が使われます。キノコを収穫したあとの廃菌床を熱処理して得られる多孔質な炭素材料をキャパシタの電極として活用する研究が進められています。キャパシタとは、電極にイオンを脱着させることで充電・放電するデバイスです。電極の表面積が大きいほどイオンが吸着するため、多孔質な活性炭が使われます。菌糸が入った廃菌床をさらに発酵させて熱処理した炭は、木材をそのまま炭にするよりも穴の形状に優れ、イオンが吸着しやすいことがわかりました。
さらに、発酵の過程で排出されるメタンガスも無駄なく炭素材料に活用することが検討されています。
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先生情報 / 大学情報

信州大学 工学部 水環境・土木工学科 教授 林 卓哉 先生
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