日本語を学ぶ人の頭の中では何が起こっている?

日本語を学ぶ人の頭の中では何が起こっている?

日本語を教えるために

日本語教育とは、日本語を母語としない人たちを対象にした教育のことです。従来の日本語教育の現場では、読解や会話、作文などの実践的な授業方法に重点が置かれてきました。しかし、学習者のためになる授業を行うためには、まず日本語学習者の言語習得メカニズムを知ることが大切です。

学習者の頭の中を見てみよう

それはつまり、第二言語を習得する学習者の立場に立ってみる、ということです。例えば、日本語学習者には、母語に関係なく共通してつまずくポイントがあります。例えば、「大きいの車」「高いの本」など、本来必要のない「の」を入れてしまう間違いです。この間違いは日本人の小さな子どもにも見られます。つまり、日本語が母語か第二言語かにかわらず、日本語習得の初期段階でしばしば起こるということです。
重要なのは、こうした学習者のよくある間違いや日本語習得の過程を理解することです。「どう学んでいるか」「どう理解しているか」はもちろん、「日本語のどこを難しく感じているか」「どこがわかりづらいか」を知らなければ、学習者のためになる授業はできません。従来の教師目線ではなく、学習者目線で日本語の授業を考える必要があるのです。

科学的な裏付け

このようなことについて考える研究分野を「教室内第二言語習得研究(ISLA)」といいます。日本語教師が教える「教室内」という特別な環境下で、学習者はどのように第二言語を習得しているのかを研究し、より効果的な指導方法について考えます。理論と実践を結びつけることで、なぜその教え方がよいのかを科学的に説明できるようになります。さらに、教師が指導する教室内での習得と、そうでない教室外での習得との違いなども明らかになるでしょう。
教室内第二言語習得研究を学び、様々な理論を知ることで、新人教師であっても経験が少ないうちから効果的な指導方法を考えることができるようになります。ベテラン教師の経験や勘に頼った教育から脱却して、日本語教育全体の質を向上させることにつながるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

学習院大学 文学部 日本語日本文学科 准教授 中上 亜樹 先生

学習院大学 文学部 日本語日本文学科 准教授 中上 亜樹 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

日本語教育学、第二言語習得論

先生が目指すSDGs

メッセージ

日本語教師は、学習者にとって最初の外国人、また日本語の先生になることもあります。単語もほとんど知らなかったのに、1年後には日本語でお礼の手紙が書けるようになる人がいます。そのすべては、自分の教えた言葉です。そんなふうに、人の人生に大きな影響を与えられるのが日本語教師の大きな魅力です。日本語教育を学ぶ先輩たちは、とにかく言葉に興味を持っている人が多いです。外国語が得意である必要はありません。言葉を掘り下げて考えるのを楽しめる人なら、日本語学習者の「なぜ」を一緒になって考えることも楽しめるでしょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

学習院大学に関心を持ったあなたは

ワンキャンパスで少人数教育を重視する学習院大学は、学生と教員の距離が近く、のびのびと学べるアットホームな校風が自慢。JR山手線目白駅から徒歩30秒という抜群の立地に、東京ドーム約4個分の広大なキャンパスを持ち、四季折々の美しい自然とともに大学生活を送れます。高い研究力に支えられた専門性、ワンキャンパスに5学部17学科が集う環境を活かした学際性の両面から、ブレない芯と、しなやかな協調性とをそなえた”T型人材”を育成します。