国境を超えたガバナンスがあれば、国際問題も解決できる

環境問題も貿易の課題に
毎日流れるニュースには、何らかの国際関係の話題が取り上げられています。さまざまな話題がありますが、中でも貿易では、各国の政策や制度、経済が影響して、さまざまな課題や関係性が生まれます。
例えば、環境問題を貿易の観点から見てみると、環境先進国と環境後進国の間で格差が生じています。先進国は環境保護を理由に、環境負荷の高い輸入品に炭素関税(カーボン・タリフ)を課し、環境基準に適さない製品の輸入を制限しています。これは環境保護には有益なのですが、貿易の自由化には反しており、環境後進国は自国の製品を販売できないといった影響があります。
成功例がEUの組織
それぞれの国で政策や文化、思惑があるため、国家間で問題が生じるのは当たり前です。そんな中、国を超えて、協力し合う体制をつくっている事例があります。その一つが、EUの原子力安全対策です。
原子力エネルギー政策において原発事故などが起きた場合、EUは速やかに協働して対応する仕組みがあります。情報を共有し、EU諸国が一つになって調査し、安全対策を講じるのです。意外なことに、EUに加入せず中立の立場を保つスイスが、安全に関する国際ルールづくりに積極的に参加しています。
機密情報など、国外に出せない情報もあります。機密は保護しつつ、安全面の基準づくりができれば、2国間では解決できないことも、より大きな枠組みで解決できるようになるのです。
東アジアの安全は
東アジアには、ヨーロッパよりもはるかに多くの原発があります。中立的な立場の組織や、安全に関する基準、目的を共有するガバナンスがあれば、有事のときに国を超えて国際平和のために機能するルールとなり得るでしょう。
今現在、東アジアにも組織はあるものの、有効に機能していないのが現状です。東アジアでの主要国である日本、中国、韓国の3国が協力しやすい組織や仕組みがあれば、東アジアの安全に貢献できます。どうしたらそれが実現できるのか、多角的に検討する必要があります。
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