楽譜も説明もいらない! 動画に合わせて音楽をつくる新しい授業

1分動画が音楽づくりを変えた
「みんなで自由に音楽をつくろうとしても、教室が騒がしくなってうまく進まない」。音楽の授業でたびたび見られる光景です。小学校教材「星空の音楽」でも、35人の子どもが思い思いに音を出した結果、表現と雑音の区別がつかなくなりがちでした。そうした課題に向き合う中で生まれたのが、「視覚誘導型音楽づくり」です。教師の説明は最小限にとどめ、1分ほどのアニメーション動画を見ながら子どもたちが自由に音楽をつくります。動画には色とりどりの星が現れ、その動きが音楽づくりの出発点になります。
条件制御が創造性を引き出す
この授業の鍵は「条件制御」です。星の色を4色に限定することで、自然に4人グループになり役割分担が生まれます。音も五音音階に絞ることで、どの音を組み合わせても調和しやすくなります。「何でも自由に」と言われるよりも、ある程度の枠があったほうが取り組みやすいのです。さらに、タブレット端末で動画を再生すれば教室外でも活動でき、騒音に敏感な子への配慮にもなります。これはギガスクール構想の「1人1台端末」にも対応した、現代の教育環境に合った取り組みです。
子どものひらめきが音になる瞬間
ある授業では、流れ星が動く場面に合わせて、子どもが手を斜めに振りながら楽器を鳴らしました。その動きによって音色が変化し、思いがけない表現の深まりが生まれます。「視覚誘導型音楽づくり」は、視覚・聴覚・身体感覚などの諸感覚を子どもが働かせながら自由に表現できるのが特徴です。出来を評価するのではなく、「ここを工夫していたんだね」と気づきやひらめきに注目し、取り組みの良さを子どもも教師も共有できます。
教材動画には言葉が含まれていないため、文化や言語の違いを越えて授業は成立します。1分程度という動画の長さも、子どもには受け入れやすく効果的です。「視覚誘導型音楽づくり」は、未来の音楽教育を開く可能性を秘めた取り組みといえるでしょう。
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富山国際大学子ども育成学部 子ども育成学科 講師湯澤 卓 先生
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