泥だんごから始まる学び 生活科が育てる「思いやりの力」

泥遊びが学びの出発点
「ザラザラしてる」「ひんやりしてる」。小学校低学年の生活科では、泥をこねる子どもたちからそんな言葉が自然に飛び出します。泥遊びのような体験から学びを広げていくのが、生活科の特徴です。ほかの教科が「何を教えるか」から始まるのに対し、生活科ではまず体験を通して「子どもがどんなことを感じているか」に注目します。泥の感触を言葉にして、友だちと違いを伝え合いながら、子どもたちは自分の思いや発見を言葉にする力を育てていきます。体験を重ねながら学ぶ姿勢は「総合的な学習の時間」でも大切にされており、子どもたちの探究心や人との関わりを深める土台になります。
異年齢で学ぶことで育つ力
生活科や総合的な学習の時間で育まれる「感じ取る力」や「伝える力」は、人と関わる学びの場でも生かされます。異なる学年の子どもたちが一緒に学ぶ「異年齢学習」では、その力がさらに深まっていきます。例えば1年生と6年生が中国語のあいさつなど未知のことを学ぶと、6年生は教える立場として責任感をもち、1年生は年上の子に憧れて真剣に取り組みます。お互いが影響し合う中で、「この子、困ってないかな?」と相手を気づかうまなざしも育っていくのです。
未来を支える「3つの意識」
「個の意識」「社会の意識」「相手意識」の3つの視点は、生活科や総合的な学習の時間、異年齢の学びの中で、少しずつ育まれていきます。例えば、環境にやさしいゴミ処理場を建てる計画があるとします。このとき、「家の隣には来てほしくない」と感じるのは「個の意識」、全体の利益を考えるのが「社会の意識」です。この2つの間で葛藤が生まれたときに必要なのが「相手意識」です。「相手意識」とは自分とは違う立場の人の思いや背景を想像して、どうすれば納得し合えるかを考える力のことです。子どもたちは、泥遊びや異年齢の触れ合いを通して、3つの意識を育てていきます。それは将来、対立を対話に変えて、よりよい社会をつくる「生きる力」の土台になるのです。
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富山国際大学子ども育成学部 子ども育成学科 教授(学部長)三原 茂 先生
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