成功への道は一つじゃない! 中小企業の多様さを読み解く

成功の型がない中小企業
これまでの経営学では大企業を中心とした研究が主流でした。しかし、企業全体の99%を占めるのは中小企業です。中小企業には「異質多元性」という特徴があり、企業によって全く異なる性質を持っています。そのため中小企業研究は非常に複雑で、一つの成功パターンでは説明できません。
資金調達、人材確保、立地条件など、抱える課題もさまざまです。大企業のように定形的な戦略を取れないのが中小企業の難しいところであり、同時に可能性でもあります。
どんな中小企業が成功する?
例えば、駅前の人通りが多い場所で店が繁盛するのは当たり前だと思うでしょう。一方、山奥にありながら何時間もかけて客が通う店もあります。その店は、小麦アレルギーの人のために米粉だけでパンを作る専門店です。ニッチで市場が小さく、需要が少なく思われがちですが、実際にはアレルギーで困っている人が遠方からでも訪れるため、繁盛しています。今はSNSを活用することで、全国から顧客を集めることが可能になったことも成功の理由の一つでしょう。また、高齢者向けに企画した宅配弁当が、20代30代の働く若い世代に人気が出たケースもあります。彼らがタイムパフォーマンスを重視するようになったためです。
このように、一見成功のセオリーから外れた事例が成功したり、狙いとは異なる層に響いて成功したりする例もあるのです。
人にしか判断できない経営
AIの活用が進む中でも、中小企業の経営には人間にしかできない判断が数多く残されています。経営理念上なくしてはいけない商品や、従業員の特性に合わせた仕事の割り振り、投資のタイミング判断などは、総合的な判断が必要です。さらに、利益追求だけでなく地域課題解決や社会貢献をめざして、地方のスーパーが赤字覚悟で営業を続ける、途上国の貧困問題解決のために事業を始める、といった例もあります。
中小企業研究の意義は、この多様さを理解して、それぞれに適した解決策を見つけることにあるのです。
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