未来の暮らしをつくる建築とは

変わりゆく暮らし
私たちの暮らしは、時代とともに変化してきました。例えば住宅は、夫婦と子供による家族を想定していましたが、現在では単身者の世帯が4割近く、東京では半数を占めています。長寿命化により、子育て期間の割合が減る一方、介護期間が増えるなど、これまでの住宅モデルでは対応が難しくなっており、空き家問題の一因にもなっています。また、オフィスも大きく変化しています。席の決まった従来型のオフィスから、作業によって自由に席を選べるフリーアドレス型のオフィスや、リモートワークなどへの移行や、AIの一般化など働き方は大きく変わっています。
変わらない価値を探す
変わり続ける暮らしの中で、建築が大切にすべき「変わらない価値」とは何でしょうか。その一つが「豊かな空間体験」です。光や温度、風速を一定に保つだけではなく、自然が持つ多様な空間を取り入れることが毎日の生活を豊かなものとするでしょう。テラスや縁側など、多様に変化する空間やそれによって移り変わる光、自然な風が通り抜ける気持ちよさに気づいている人が多いことは、カフェのテラス席などが人気を集めるようになったことからもわかります。これまでは閉じた四角い部屋を均質な照度や温度としていましたが、現代ではよりオープンで多様な光や風を取り込むデザインが広がっています。
建築の未来
こうした新しい価値観に応えるために活用されている技術の一つが「CFD(数値流体力学)」です。風や温度の流れをシミュレーションする技術を設計に応用することで、これまでは見ることができなかったちいさな渦巻きなどの風のかたちをコントロールすることができ、森の中のような豊かで快適な風の流れを楽しむことができます。こうした技術はエネルギー使用量を減らし、持続可能な社会の実現にもつながります。
建築もまた、時代に合わせて進化し続ける必要があります。未来の暮らしを正確に予測するのは難しいですが、「多様で豊かな空間」という本質的な価値を大切にすることで、建築の未来を考えていくことは可能です。
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