講義No.15414 建築学

未来の暮らしをつくる建築とは

未来の暮らしをつくる建築とは

変わりゆく暮らし

私たちの暮らしは、時代とともに変化してきました。例えば住宅は、夫婦と子供による家族を想定していましたが、現在では単身者の世帯が4割近く、東京では半数を占めています。長寿命化により、子育て期間の割合が減る一方、介護期間が増えるなど、これまでの住宅モデルでは対応が難しくなっており、空き家問題の一因にもなっています。また、オフィスも大きく変化しています。席の決まった従来型のオフィスから、作業によって自由に席を選べるフリーアドレス型のオフィスや、リモートワークなどへの移行や、AIの一般化など働き方は大きく変わっています。

変わらない価値を探す

変わり続ける暮らしの中で、建築が大切にすべき「変わらない価値」とは何でしょうか。その一つが「豊かな空間体験」です。光や温度、風速を一定に保つだけではなく、自然が持つ多様な空間を取り入れることが毎日の生活を豊かなものとするでしょう。テラスや縁側など、多様に変化する空間やそれによって移り変わる光、自然な風が通り抜ける気持ちよさに気づいている人が多いことは、カフェのテラス席などが人気を集めるようになったことからもわかります。これまでは閉じた四角い部屋を均質な照度や温度としていましたが、現代ではよりオープンで多様な光や風を取り込むデザインが広がっています。

建築の未来

こうした新しい価値観に応えるために活用されている技術の一つが「CFD(数値流体力学)」です。風や温度の流れをシミュレーションする技術を設計に応用することで、これまでは見ることができなかったちいさな渦巻きなどの風のかたちをコントロールすることができ、森の中のような豊かで快適な風の流れを楽しむことができます。こうした技術はエネルギー使用量を減らし、持続可能な社会の実現にもつながります。
建築もまた、時代に合わせて進化し続ける必要があります。未来の暮らしを正確に予測するのは難しいですが、「多様で豊かな空間」という本質的な価値を大切にすることで、建築の未来を考えていくことは可能です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪産業大学 建築・環境デザイン学部 建築・環境デザイン学科 准教授 吉原 美比古 先生

大阪産業大学 建築・環境デザイン学部 建築・環境デザイン学科 准教授 吉原 美比古 先生

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建築学、建築デザイン

メッセージ

普段の通学や、休日の外出などで、さまざまな建物を目にしていると思います。少し立ち止まって、「なぜこのかたちなんだろう?」と考えてみてください。建築のかたちには、それぞれに理由があります。例えば、教室の窓が天井近くまであるのは、自然光を部屋の奥まで届けるためです。建物のかたちや大きさ、窓やドアの大きさや位置、壁や床の素材には必ず理由があるのです。そんな小さな気づきが、「空間をつくる」という仕事への興味につながるかもしれません。そして興味を持てたら、ぜひ一歩を踏み出してみてください。

大阪産業大学に関心を持ったあなたは

大阪産業大学 建築・環境デザイン学部・学科は、もの・建築・環境・空間・自然・都市に関連する幅広いデザイン分野を学べる学部・学科です。この学科では、人々の快適さや機能性を高めるデザインを通じて、社会に貢献するプロフェッショナルを育成しています。
1年次には各コースの基礎やデザインの意義、問題点を学び、2年次以降に専門分野を選択します。どのコースを選んでも建築士受験資格が得られるほか、コースによっては理科・工業教員免許の取得も可能で、将来の職業に合わせたスキルを効率的に習得できます。