住まいの環境のリアルを調査して人々の健康維持に貢献

住まいの環境のリアルを調査して人々の健康維持に貢献

住まいの寒さは健康に悪い?

健康に影響するものとして、私たちが毎日を過ごす住宅の室内環境も少なからぬ影響を与えています。よく知られているのは寒さが循環器系疾患に与える影響で、特に秋田県などの寒い地域では、脳血管疾患の死亡率が高くなっています。実際に高齢者の住宅を訪ねて起床時の血圧などを調べたところ、室温が15度以下では多くの人が高血圧のラインである135mmHgを上回り、脳卒中や心疾患のリスクが高まっていることがわかりました。こうした結果から、住まいの寒さが原因で病気を発症することがないように、断熱リフォームなどによる温熱環境の改善に期待が高まっています。

住まいの湿度と健康との関係は?

湿度が高すぎる状態も健康に影響があると考えられています。しかしながら、それらの因果関係には不明な点が多く、国際的にも調査が進められています。例えば、結露の程度やカビの臭いなど、居住者の主観に基づいた評価を組み合わせて、ダンプネスの程度を評価する指標をつくってみると、鼻やのどに生じる健康への悪い症状は、ダンプネスの程度が高いほど有症率が上がることがわかりました。この結果から、湿度が高い状態で過ごすことは健康に良くないことがわかります。
一方で、室内の乾燥は直接的・間接的に健康には良くないことも明らかになりつつあります。

水害により住まいの環境が悪化したらどうなる?

近年は日本各地で水害が発生しています。住まいが浸水すると壁の内部や床下が濡れた状態になりますが、何も処置をせずにそのまま住み続けてしまうと、健康への悪い影響があることもわかりつつあります。また、浸水の被害にあった住宅を手放して引っ越してしまう人が多くなると、地域の過疎化も懸念されます。
浸水しても住宅が壊れていなければ住み続けることは十分に可能です。どうすれば早く元の生活に戻ることができるのでしょうか。浸水した住宅の壁や床下の木材の湿り具合などのデータを集め、住まいを元の状態に戻すノウハウの確立をめざした研究が進められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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秋田県立大学 システム科学技術学部 建築環境システム学科 教授 長谷川 兼一 先生

秋田県立大学 システム科学技術学部 建築環境システム学科 教授 長谷川 兼一 先生

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建築環境学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は研究対象の建物に足を運ぶことが多く、そこでいろいろな人と出会います。特に自分と違った分野の知識を持つ人との出会いはとても刺激的です。お互いの強みを理解し合うことが、現場での課題解決の大きな力になることを日々実感しています。あなたには、自身が興味を持ったことを学びながら、分野が違う人とも積極的に交流してほしいと思います。最近ではSNSでのつながりもあると思いますが、リアルに人とのつながりが持てると、前向きな気持ちにもなれます。勇気をもって新しい世界に飛び込んでみてください。

秋田県立大学に関心を持ったあなたは

秋田県立大学は、最先端の設備と全国トップクラスの少人数教育体制など、入学から卒業まで着実に成長できる環境が整っています。中でも「学生自主研究制度」は、入学後すぐに研究に取り組める制度です。学生が主役のこの制度は、自ら研究テーマを決定し、指導教員がアドバイスを行い、実験スペースや機材、そして研究資金を交付して学生をバックアップします。秋田県立大学は、新しい知識を得ながら、知的好奇心を満たす無限のフィールド、学生が主役になれる大学です。