土砂崩れが起きる場所には特殊な地層があった

土砂崩れが起きる場所には特殊な地層があった

災害に強い林道を作りたい

林道は木材を運搬するなど林業関係者にとって必要な道です。しかし、林道で土砂崩れ(表層崩壊)が発生すると、林業活動に悪影響が出るばかりか、周辺の森林や河川、集落に被害をもたらす可能性があります。そのため林道を造るときは、土砂崩れが起きにくいように、危険箇所を避けるルートにするなどの配慮をしなければいけません。
しかし、表層崩壊が発生する場所の予測は難しく、完全に防ぐことは難しいのが現状です。発生場所の予測に役立つ情報として特によく知られているのが、ゆるやかな斜面が急斜面に変化する「遷急(せんきゅう)点」というポイントで、ここで表層崩壊の発生リスクは比較的高いとされています。

弱く崩れやすい地層の存在を発見!

遷急点で表層崩壊が起きやすくなるメカニズムを解明するために、地盤の固さを調べる「貫入試験」という検査が行われました。その結果、弱く崩れやすい「脆弱(ぜいじゃく)層」という地層の存在が発見されました。脆弱層は地下約75cmにあり、土粒子同士の隙間が広く、水を多く含むとぐずぐずと崩れてしまうのが特徴です。そのため、雨が降った後は崩れやすく、表層崩壊を起こしやすくなるのです。
脆弱層が発見された場所と遷急点の場所を比較すると、この2つは一致していることがわかりました。つまり、「斜面の傾きが急に変わり」「その下に水を多く含むと崩れやすくなる地層が存在する」地点を中心に、表層崩壊が起きやすくなるということがわかったのです。

様々な地質地形で災害に強い道づくりを目指して

この研究により、貫入試験を行い脆弱層の有無を確認すれば、より土砂崩れを起こしにくい安全な林道が造成できるというめどがたちました。しかし、日本の中でも地域によって地質や地形は異なります。脆弱層を発見した貫入試験は鳥取県で行われましたが、その結果をそのまま他の地域の山間部に適用できるとは限りません。今後は、日本の各地でも同様に、表層崩壊のメカニズムの解明やその防止策をさらに進めていく必要があります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東北農林専門職大学 農林業経営学部 森林業経営学科 准教授 小山 敢 先生

東北農林専門職大学 農林業経営学部 森林業経営学科 准教授 小山 敢 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

防災工学、森林科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

今は、スマートフォンやインターネットを使えば手軽に知識を得られる時代です。しかし、画面越しの情報では、現場の感覚はわかりません。特に林業や砂防、防災に関わる学問は、現場に足を運ぶことで得られる泥臭い体験や感覚が新しい発見につながります。この分野に興味があるなら、ぜひ自分の足で山を歩き、やぶに分け入ってみてください。デジタルツールの活用とフィールドワークをバランス良く行って得られる知識・感覚・経験は、調査研究における重要な武器になるはずです。

東北農林専門職大学に関心を持ったあなたは

2024年4月、東北初の公立農林業系専門職大学として開学しました。農業・森林業の生産や経営・管理に必要な知識と、理論に裏付けられた技術、地域活性化に向けた課題抽出と解決の実践的手法、関連分野に関する応用的な知識(加工・販売、発酵・醸造、森林生態系サービス、観光等)、SDGsなどの幅広い教養を学びます。講義での最先端の理論に加え、先進農林業経営体での3年間計90日にわたる実習をはじめ、充実したフィールドワークや卒業単位数の1/3以上の学内外での豊富な実習で、理論と実践をバランスよく学べます。