森林の散策にはリラックス効果がある? 唾液検査の活用

森林の散策にはリラックス効果がある? 唾液検査の活用

森林を浴びるという概念

森林環境や森林での活動を通じて、健康増進や病気の予防・治療に利用する「森林浴」という概念があります。森林には、新緑や紅葉などの四季の景色、美しい花々、木々の香り、野鳥の声など、さまざまな刺激があり、その中でひとときを過ごすことによって、心身をリラックスさせる効果があると考えられています。そこで、本当にリラックス効果があるのか調査が行われました。その方法として、人間がストレスを感じると活性化する唾液中のアミラーゼを計測する手法が用いられました。スティックを舌の下に置いて唾液で湿らせ、そのスティックを計測装置にかけるだけの簡単な検査です。その結果、確かに森林環境は人をリラックスさせる効果を有することが実証されました。

患者にも健常者にもリラックス効果あり!

森林散策の前後でアミラーゼ値は変化するのか、精神科でリハビリを受けている患者を対象に調査してみると、1時間ほどの森林散策後にアミラーゼ活性の数値が下がり、リラックスしていることがわかりました。そして、症状の軽い患者よりも、症状の重い患者のほうがより効果が大きいこともわかりました。一般に医療従事者は、重症の患者のほうが治療するのは難しいと考えがちですが、そうではなかったのです。また健康な看護師にも同じ調査が行われましたが、やはり森林散策後に数値が下がり、リラックス効果が認められました。

簡単な唾液検査をストレスコントロールに役立てる

精神科の治療には薬物療法や心理療法などさまざまな方法がありますが、森林浴という活動は、症状を緩和させる有効な手段になることが期待できます。また、この唾液アミラーゼ検査を活用することによって、森林環境での活動に限らず、ほかにもストレスを緩和する環境や活動がもっと見つかるかもしれません。さらには、唾液アミラーゼ検査は、自分自身でも行える検査なので、ストレスのセルフコントロールにも役立つと思われます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

埼玉医科大学 保健医療学部 看護学科 教授 大賀 淳子 先生

埼玉医科大学保健医療学部 看護学科 教授大賀 淳子 先生

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精神看護学

メッセージ

学生時代は、ぜひ何かに没頭する体験をしてみてください。すると自律神経が自然に調節されて、健康的に過ごせるようになります。また、そのときには、自分の心と体がどのような状態になるかを意識してみてください。自分の心身を意識する習慣が身につくと、心と体のストレスに気づきやすくなり、これからの人生を幸せに生きていけるように思います。そして、もしあなたが健康や医療の分野をめざすなら、人間への興味関心を持ち、患者さんへのリスペクトの気持ちを忘れないようにしてください。

埼玉医科大学に関心を持ったあなたは

埼玉医科大学は、医学部と保健医療学部(看護学科・臨床検査学科・臨床工学科・理学療法学科)からなる医療系総合大学です。教員と学生がともに学び合う「師弟同行の学風」でサポート体制が厚く、関連3病院と連携しているので、低学年から最先端の医療技術に触れる機会も充実しています。
患者さん中心の医療を徹底できる「すぐれた医療人」の育成を実践しています。ぜひ、この機会に埼玉医科大学の学びに触れてみてください。