遺伝子を自由自在に選択して、理想の植物を作る日が来る?

全ゲノム解析で理想の植物を
この10年間でゲノム解析の技術水準が大きく上がり、短期間で数千個体の全ゲノム解析を行えるようになりました。さまざまな品種のゲノムを解析して比較すると、特徴のある形質の遺伝子がどこにあるのかがわかります。これらの遺伝子を組み合わせて、効率よく理想の植物を作れる日が近づいています。「桃のような香りがしておいしそうな黄色い果肉の、育てやすいパインアップル」や「華やかな八重で丸く咲く青い色のアジサイ」などを作れるのです。
パインアップルのトゲ
パインアップルには、葉にトゲのある品種とトゲのない品種があります。このトゲはデニム生地を突き抜けるほど鋭いので、栽培するにはトゲのない品種が求められます。また、果肉は白っぽいものよりも黄色いもの、よい香りがするものが人気です。このようなパインアップルの形質を決める遺伝子をすべて明らかにすることをめざして、ゲノム解析が進められています。トゲを作る遺伝子は第23染色体上にあることや、トゲのない品種ではこの遺伝子配列の中に逆向きの配列が挿入されていて、遺伝子の発現が抑えられていることがわかりました。果肉の色を決める遺伝子は第8染色体に、香りに関わる遺伝子は第5染色体にあることなどもわかってきています。さらに数千個体のゲノムを解析して比較し、果実の重さや葉の低温耐性、香り成分の含有量など、さまざまな形質を決める遺伝子の解明が進行中です。
アジサイの咲き方
アジサイは、日本原産のガクアジサイを元にさまざまな品種が作られており、日本だけでなく世界中で愛されています。そのアジサイには大きく2つのタイプの咲き方があり、大きな花が球状に集まって咲く「手まり咲き」と、小さな花の周りを大きな花がドーナツ状に囲む「ガク咲き」です。こちらもゲノム解析の結果、手まり咲きに関する遺伝子が見つかり、世界的にも大きな注目を集めています。次は花の色を決める遺伝子の発見をめざして、さらなる解析が進められています。
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日本大学 生物資源科学部 バイオサイエンス学科 准教授 奈島 賢児 先生
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