「ダンゴムシのポーズ」は有効? 学校の避難訓練をアップデート

「ダンゴムシのポーズ」は有効? 学校の避難訓練をアップデート

防災対策:ハードとソフト

地震や大雨による洪水など、異常な自然現象によって引き起こされる災害は、いつ起こるかわかりません。そのため建物や橋の耐震化など構造物を中心とした「ハード防災対策」のほかに、情報、訓練、計画といった人が関わる「ソフト防災対策」も必要不可欠です。ソフト防災は、災害の種類を問わず、人や社会の対応、仕組みを変えることで被害を防ぐことを目標に進められています。少子高齢化や人口減少社会においては、施設整備によるハード防災対策を推進することには限界があります。今後、ソフト防災対策の重要性はより一層大きくなります。

30年前から変わらない避難訓練の講評

学校の避難訓練では「〇分〇秒かかった」「私語をしなかった」などが評価されますが、大地震ではまず「地震だ!」と周囲に知らせ、揺れが収まったら「大丈夫か?」と声をかけ合うことが大切です。すぐ校庭に集まるのは、火災時の対応であり、地震では状況を見て行動する必要があります。「おはしも」などの避難の約束事は、地下街などでの火災を想定した標語であり、実は学校のための標語ではありません。さらに「ダンゴムシのポーズ」は周囲が見渡せず、背中がむき出しで無防備で危険です。これまでの防災教育には、科学的根拠が弱いものも多く、より現実に合った訓練が求められているのです。

〇〇さえすれば安全?

何事も「〇〇さえすれば安全」と、それで思考停止させるような伝え方は適切ではありません。自治体から配布される「ハザードマップ」も、居住地域が浸水想定区域に入っていないと「うちは安全なんだ」と思われるかもしれません。しかしそもそも小さな川の氾濫などは対象となっていないことや、想定を超える災害が起きることもあり、実は大丈夫とは限らないという正しい理解が必要です。防災対策では、根拠のない思い込みを排除しつつ、「本当にこれで安全なのか?」と問題意識を持ち続けることが大切なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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日本大学 危機管理学部  教授 秦 康範 先生

日本大学 危機管理学部 教授 秦 康範 先生

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メッセージ

危機管理学部と聞くと、消防、警察、自衛隊や自治体に就職したい人が学ぶというイメージを持つかもしれません。実際にその道に進む学生もいますが、大半はさまざまな分野の職業に就いています。なぜなら危機管理学は非常に幅広い学問で、「危機管理の視点」は企業の営業職でも管理職でも、世の中のあらゆる仕事において求められているからです。そういう意味では、災害や防災に興味がある人はもちろん、特に関心がない人でも、危機管理学部で学んだことは将来的に生かすことができます。

先生への質問

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