緩く固めるといろいろ便利! 機能的な「ゲル化剤」を作る

液体を緩く固める「ゲル化剤」の研究
プリンやこんにゃく、ソフトコンタクトレンズなどのように、液体が分子のネットワークによって閉じ込められてできた、やわらかい固体を「ゲル」と呼びます。液体(例えば水)をゲル状に変える物質を「ゲル化剤」といいます。例えばこんにゃくでは、コンニャクイモに含まれる成分(ゲル化剤)が、水と混ざり、さらに凝固剤と反応することで分子の網目構造を作り、その中に水を閉じ込めてゲルになります。こんにゃくのように自然にできるものもありますが、化学の研究では人工的にさまざまなゲル化剤を合成し、分子レベルでものを作る研究が進んでいます。
液体に戻せる低分子ゲル化剤
ゲル化剤の種類によって、ゲルの性質は大きく異なります。例えば、こんにゃくは高分子ゲル化剤によって強いネットワーク構造を作るため、一度固まると液体には戻りません。一方、低分子ゲル化剤は水素結合などの弱い力で分子がつながっているため、熱などの刺激で液体に戻ることがあります。分子構造を工夫すれば、固める溶媒を変えることも可能で、将来はガソリンを固めて安全に輸送する用途も期待されています。
特定のキラル分子を選んで固める
ある低分子ゲル化剤で得られたゲルの構造をナノレベルで観察したところ、分子が右巻きのらせん状に並んでいることがわかりました。そして、このゲル化剤は、ある特定のキラル分子だけを取り込んでゲルを作る性質があることも明らかになりました。キラル体とは、分子の構成要素は同じでも、手のように左右対称になっている分子のことです。たとえば、右手と左手は見た目はよく似ていますが、重ね合わせることはできません。分子にもこのような「右手・左手」のような違いをもつものがあります。このゲル化剤は、その「右手」か「左手」のどちらか一方とだけうまくかみ合って、ゲルを形成します。この性質を利用して、混ざっているキラル体の中から一方だけを選び出す方法や、その仕組みの解明に関する研究が進められています。
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金沢大学 理工学域 物質化学系 教授 添田 貴宏 先生
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