柔らかなコンピュータ技術で社会を読み解く! 感性工学の世界

柔らかなコンピュータ技術で社会を読み解く! 感性工学の世界

ソフトコンピューティングとは何か

コンピュータは通常、ルールに従って正確に計算を行います。しかし人間は日常生活で「だいたい」「○○は美しい」といった曖昧な表現を自然に使っています。また、少々情報が欠けていても、柔軟に状況判断ができます。ソフトコンピューティングは、人間の曖昧さや柔軟性などを積極的にシステムに取りいれる方法論のことを言います。ファジィ理論やニューラルネットワーク、機械学習などを用いて実現します。例えば、人が釜を使ってお米を炊く方法を、ファジィ理論を使って実現し、炊飯器に取り入れられたこともあります。このソフトコンピューティングは、人の「感性」と融合性が高く、人の「感性」を取り入れた分析などにも応用されています。

感性をデータで分析する

人間の曖昧な感覚をコンピュータで扱えるようになると、次はその感覚を深く理解したいという新たな課題が生まれます。感性工学は、人の「美しい」「心地よい」「好ましい」といった感覚や印象を数値化して分析する分野です。例えば化粧品ブランドのSNSを分析すると、高級感や親しみやすさなど、人々が持つイメージが違うことがわかります。ほかにも、各都道府県を「感情的な要素」で分類し、幸福度ランキング1位の福井県のその理由を、客観的データで分析する研究なども行われています。このようにさまざまな分野で活用されている感性工学は、AI技術の発展により、さらに新たな可能性が広がっています。

感性と理性を融合する学問

データと人間の感覚を結びつける研究が進む中では、AIを道具として使いこなし、出てきた結果の良し悪しを判断して「なぜそうなるのか」を考える能力が重要です。「データ」を読み解き、活用するのは人間です。AIが感性のような曖昧なデータを扱えるようになるにつれ、それを応用する人間にも新たな力が求められているのです。文系理系を問わず、データと人の感性を大切にして、社会の問題を解決していこうとするのが、ソフトコンピューティングや感性工学という学問です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

福井大学 国際地域学部  教授(学部長) 井上 博行 先生

福井大学 国際地域学部 教授(学部長) 井上 博行 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

ソフトコンピューティング、感性情報学

先生が目指すSDGs

メッセージ

人の感性や直感は、データ分析において重要な要素です。「この色は美しい」「なんとなく気になる」といった感覚を数値化して分析する感性工学では、人の心を理解することから始めます。あなたが将来どんな分野に進んでも、データと感性を組み合わせて判断する場面がきます。AI時代だからこそ、機械にはできない「なぜ」を感じ取る力や、結果を感性という物差しを使い、人間らしい視点で検証する力が求められます。文系理系を問わず、自分の感性を大切にして、それをデータで裏付ける柔軟な思考力を育ててください。

福井大学に関心を持ったあなたは

本学は教育学部、医学部(医学科、看護学科)、工学部、国際地域学部の4学部からなる国立大学です。「創造力、実践力」をキーワードに、本学で学んだ学生が生涯にわたって創造力や指導力を発揮できるよう、学びの力となる学問の基礎及び方法の習得をめざします。先端研究に支えられた教育内容と、不断の省察による教育技術によって、学生がそれぞれの個性に目覚め、社会に貢献できる実践的知識と技術を習得して卒業する事を目標とします。就職率は複数学部を有する国立大学で18年連続ナンバー1の実績があります。(H19-R6年度)