講義No.15517 経営学・商学

「未来の新製品コンセプト」をどうやって伝えるか

「未来の新製品コンセプト」をどうやって伝えるか

革新的! でもイメージしにくいという課題

新製品を作る際、完成品を世の中に出す前に他者の意見を聞き、「本当に必要とされるか」「どこを直したらいいか」をよく考えることが大切です。特に、まだこの世に存在しない革新的な新製品ほど、その製品評価は誰にとっても難しくなります。例えば「空飛ぶクルマ」は実現すれば便利と期待されている一方、「よくわからない」「日常的に使う場面を想像できない」という人もいます。こうした革新的な新製品開発の際に関係者へどう伝えれば有益な意見を得られるのかが、大きな課題です。

「未来の技術や生活」を伝える方法を考える

製品コンセプトの伝え方の研究において、空飛ぶクルマのコンセプトに関する複数の動画をそれぞれ約100人が視聴し、印象を比較する実験が行われました。安全性や技術の解説が中心の動画は「説得力がある」「現実的だ」と高評価でした。一方で、生活の中で空飛ぶクルマを使うといかに便利なのかを物語風に強調した動画は、「現実とのギャップ」の声が多くありました。つまり、まだ世の中にないものは、その製品を使用することによって得られる恩恵のみを伝える動画よりも、技術や導入プロセスの解説の方が、安心感や納得感を与えるという結果が示唆されています。

未来のコンセプトを実現するために

今あるものと大きく異なる新製品を社会に届けるには、実現性と意義を効果的に示す必要があります。ソニーのヘッドホンステレオは、日本を代表するイノベーションの1つとしてとても有名ですが、当時のオーディオ機器では普通であった録音機能を省いたことから、「売れるわけがない」と社内外で思われていました。しかし、「音楽を運ぶ」というコンセプトを実現したことで、結果、世界中で大ヒットしました。革新的な新製品コンセプトを伝達し、適切に評価することは難しいです。そのようなコンセプトを効果的に伝える文字情報や動画などの「媒体」、情報の詳細さ、登場人物の有無などの要素を実証する研究が続いています。

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先生情報 / 大学情報

一橋大学 商学部  講師 古江 奈々美 先生

一橋大学 商学部 講師 古江 奈々美 先生

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商学、デザイン思考

メッセージ

大学選びにおいては、ぜひ気になる研究者や研究テーマを見つけて、その研究に関する本を読んでみてください。マーケティングの中でも新商品のアイデア発想やデザイン思考に関心があるなら、『クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法』(デイヴィッド・ケリー、トム・ケリー著、千葉敏生:訳/日経BP)のような本もおすすめです。時には受験勉強から離れて自分の中の「なぜだろう」「面白い」という感覚を大切にして、視野を広げていきましょう。

一橋大学に関心を持ったあなたは

一橋大学の大きな特色として、まず第1に挙げられるのは、我が国で最も伝統のある社会科学の総合大学として、常に学界をリードしてきたという長い歴史と実績、並びにこの伝統を受け継ぎ、人文科学を含む広い分野で、新しい問題領域の開拓と解明を推進する豊富な教授陣に恵まれていることです。第2は、商学部・経済学部・法学部・社会学部の垣根が低く、学生は各学部の開設科目を自由に履修することができます。また、10人から15人程度の少人数で行われているゼミナール制度(必修)を核とする少数精鋭教育も本学の特色のひとつです。