翻訳者であり役者でもある AI時代を生きるデザイナーの力

翻訳者であり役者でもある AI時代を生きるデザイナーの力

デザイナーは翻訳者

デザインの仕事というと、おしゃれなロゴやかっこいいポスターをつくることがまず思い浮かぶかもしれません。実際には、形にする前の「聞く力」「読み取る力」がとても大切です。「この商品を売りたい」「会社のイメージを変えたい」といった依頼に対して、まずは、その背景にはどんな思いがあるのか、本当にロゴを変えることがベストなのか、ということを一度立ち止まって考えます。依頼者とていねいにコミュニケーションを重ねて、何を伝えたいのかを言葉やイメージに翻訳していくプロセスこそが、デザインの出発点なのです。つまりデザイナーは、「翻訳者」のような存在とも言えます。

デザイナーは役者でもある?

デザインを考える時に、もう一つ大事なのが「相手の立場に立つこと」です。例えば男性のデザイナーが、女子高校生向けの製品をデザインするなら、彼女たちの目線や感覚を理解する必要があります。時には、若い女性、高齢者、経営者など、自分ではないキャラクターになりきって考えることで、より伝わりやすい表現方法がつかめます。そんな「役者」のような演じる力も、デザイナーには求められます。それでも適切なアイデアがすぐに思い浮かぶことは少なく、多くの時間をかけて地道に相手の気持ちを理解し、形にしていくのです。

AI時代にも求められる力とは

現在は生成AIが進歩して、与えられた情報をもとに、ロゴや広告の見た目の良いデザインが簡単に生み出せるようになりました。しかし、依頼者の思いや背景をくみ取り、それにふさわしいアイデアを考えて、適切なプロンプトをAIに伝えるのは、人間にしかできません。つまり、将来のデザイナーはAIと共存しながらも、「翻訳者」や「役者」としての仕事がますます大切になるでしょう。「相手の立場で考える力」「本質を見抜く力」「伝える力」、これらはAIでは代替できません。だからこそ、これからの時代もデザイナーの仕事は人間にしか果たせない重要な役割なのです。

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先生情報 / 大学情報

日本大学 芸術学部 デザイン学科 教授 笠井 則幸 先生

日本大学 芸術学部 デザイン学科 教授 笠井 則幸 先生

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デザイン学

メッセージ

高校時代は、大人になってからの数年間よりも、はるかに密度の高い時間です。美大進学をめざすなら、もちろん実技の練習も大切ですが、それ以上に「好きなこと」や「新しい発見」に敏感であってほしいです。音楽でもスポーツでも、未知の世界に思い切って挑戦する経験は、きっと将来の自分の力になります。私自身、高校では柔道と美術を両立していました。無理のない範囲で、自分の「やってみたい」を大事にしてください。高校生の今だからこそできる挑戦があります。

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