民主主義をデータで確かめてみると

シルバー民主主義とは
少子高齢化が進む社会では、有権者に占める高齢者の割合が増えることで、政治における高齢者の影響力が高まります。その結果、例えば福祉支出の拡充といった、高齢者に有利な政策が採用されやすくなるという考え方が「シルバー民主主義」です。このテーマ自体は高齢化と民主主義、経済・財政政策といった視点で以前から学術界で議論されてきましたが、近年、メディアが多く取り上げたことで、一般にも広く知られるようになりました。
データを分析してみると
シルバー民主主義が本当に存在するのか、統計学や計量経済学の手法を用いて、日本の都道府県とアメリカの地域別のデータを分析することで実証した研究があります。存在していれば、高齢者が多い地域では、教育やインフラ整備といった未来への投資よりも、現時点の福祉支出が優先されると考えられます。分析の結果、日本ではその傾向が実証されました。
その一方で、アメリカのデータからはこの仮説が必ずしもあてはまるとは言えませんでした。両国の違いの背景にあると考えられるのが、「地方分権」の度合いです。アメリカは連邦制により、州が強い権限を持っています。さらに市民は、自分にとって望ましい政策を進める州に移住することが珍しくありません。これは「足による投票(vote with their feet)」と呼ばれる行動で、市民自体が移動することで、政策を選んでいるのです。
地方分権の可能性
日本におけるシルバー民主主義による政策の偏りを緩和する方法として、地方分権の重要性が見えてきます。例えば地方分権によって、若い世代が政策を決定する地域が生まれれば、そこでは教育や子育て、インフラ整備などの政策が進められて、経済全体の活性化にもつながることが期待されます。また、研究では日本の支出データを、都道府県よりも細かい市町村レベルで検証する動きも進んでいます。超高齢社会と向き合いながら、世代間のバランスに配慮した政策のヒントが期待されます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
