「エアコン」と「ドローンショー」をつなぐ、制御理論の世界

エアコンの温度調整に隠された数学
制御理論とは、機械やシステムを思い通りに動かすための数学的な手法です。例えば、昔ながらのストーブは人が火を弱めたり強めたりして温度を調整しますが、エアコンは自動で室温を一定に保ちます。外の気温や室内の人数が変化しても設定温度を守る仕組みは「フィードバック制御」と呼ばれ、制御理論の基本です。冷蔵庫の温度管理や車の自動制御など身近な暮らしの中に、高度な理論が息づいているのです。
複数のエージェントを協調させる
最近話題のドローンショーでは、数百機のドローンが美しい隊形を作りながら空中を舞います。これも「マルチエージェント制御」と呼ばれる制御理論の応用例です。この技術では、リーダーとフォロワーという役割分担が重要です。リーダー機は決められた経路を飛行し、フォロワー機はリーダーに対して相対的な位置を維持します。フォロワー機はリーダーがどこに向かっているかを知らなくても、「リーダーから後方に○メートル離れた位置を保つ」といった単純なルールに従うだけで、結果的に美しい隊形を作り出せるのです。
マルチエージェント制御は空中だけでなく、地上でも活用されています。例えば、複数のロボットが協力して大きな物体を運ぶ際も、同様の理論が使われているのです。
数学で安定性を保証する
制御研究では、システムを数学的にモデル化し、そのモデルを使ってどうすれば望む動きをさせられるかを設計します。ここで重要なのは、システムの安定性を保証することです。例えば、突然の風のような外部からの影響があったり、エージェント同士の情報交換が一部しかできなかったりする場合でも、システムが暴走しないように、数学的に安全性を証明するのです。そのために活用されるのが「リアプノフ関数」という数学的手法です。この関数が減少するように入力を設計できれば、システムは安定すると理論的に保証できます。こうした基礎理論は、今後も新しい応用先を切り開いていくと期待されています。
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