ベテランの技の継承はAIとXRに任せろ! スマート農業最前線

農業の技が消えゆく危機
稲作などでは機械化が進んでいますが、リンゴなどの果樹栽培は機械化が難しく、今でも手作業が中心です。良い果実を育てるために重要な「剪定(せんてい)」や実を間引く「摘果」の判断は、長年の経験で培われた「暗黙知」に支えられています。初心者には何が正しいのかわからず、失敗を恐れて適切な作業ができないことも少なくありません。そのため、ベテランの「目」と「判断」をいかに可視化して誰もが学べる形にするかが、この分野には欠かせないのです。
見えない「技」を数値で表す
こうした課題に対し、画像処理やAI技術を使って熟練技能を可視化する研究が進められています。例えば、ベテラン農家に視線計測装置を付けて作業してもらうと、彼らは「経験と勘」ではなく、実は一定の判断基準と手順に基づいて作業していることがわかりました。また、ドローンで果樹園を撮影し、剪定前後の木を3次元モデルで比較できるシミュレーションシステムも開発されています。これにより、初心者は熟練者の技を学び、失敗を恐れず何度でも練習できます。さらに、スマートグラスを用いて、果実同士の距離や混み具合を自動で判定し、どの果実を残すべきかを提示する試みも進められています。
未来を見せて育てる技術
スマートグラスを使って、春の摘果作業中に秋の収穫時の姿を仮想的に見せる技術も開発中です。間引きが不十分だと画面が真っ赤なリンゴでいっぱいになり、初心者でも「これではまずい」と実感できます。目標となる未来の姿を見せることで、恐れずに適切な作業ができるのです。また、360度カメラを使った遠隔指導システムでは、離れた場所にいる指導者が自由に視点を変えながら、現場の作業者に的確なアドバイスを送れます。
これらの技術は、農家や農業試験場などが密接に連携しながら開発が進められています。現場の知恵を受け取り、ニーズもくみ取って、実際に役立つシステムを開発することで、果樹栽培の未来を支えていくのです。
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