材料力学で高耐久のリチウムイオン電池開発をサポート

電極材の「つなぎ」
現代の便利な生活にはさまざまな機械が欠かせません。そうした機械が壊れず機能を発揮するように材料や構造について研究する学問が「材料力学」です。例えばスマートフォンなどに広く使われているリチウムイオン電池も機械構造の一つと見ることができ、電極材の耐久性に関する研究も材料力学のテーマの一つです。
一般的な電池は、電解質と正負の電極で構成されており、電極は、金属箔(はく)の基板に化学反応を起こさせる粉状の活物質がバインダー(接着剤)でくっつけられた構造をしています。活物質の原子の隙間には充電・放電のたびにイオンが出入りするので、活物質の粉は膨張・収縮します。そのたびにバインダーは引っ張られたり戻ったりを繰り返して、やがて疲労破壊を起こし電池の性能を低下させます。バインダーの耐久性の理解は電池の開発に不可欠なのです。
電池開発をスピードアップ
バインダーの組み合わせや、分量、活物質の粒のサイズと耐久性との関係を調べるため、活物質とバインダーからなる電極材の試験片を作り、継続的・断続的な力を加える実験を行います。こうした実験結果やシミュレーション解析をもとにして、電極材の設計のための計算式が構築されます。この計算式を使えば、バインダーの組み合わせや分量、粉のサイズにより耐久性がどのくらいになるのかが予測できるので、電池開発を加速させられます。つまり、計算式でよい値が出たバインダーのみ実際に試作すればよく、電池開発の時間短縮、コスト削減につながるのです。
電池開発の進化に対応させる
設計のための計算式は、複雑にならないようあえて完璧な予測はめざさず、近似や仮定を取り入れて単純化し、使いやすくかつ幅広く対応できるように作られています。一方で、新しい電極材や新しいタイプの電池の開発が日々進められており、現状の計算式がそれらに対応できない可能性も否定できません。新しい電極材に対して計算式をどのようにアップデートしていくのかも研究の一つです。
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