厄介な熱を逃がせ! 理想の半導体材料「窒化アルミニウム」

厄介な熱を逃がせ! 理想の半導体材料「窒化アルミニウム」

過酷な環境で使われる半導体材料

スマートフォン、電気自動車、ロボットなどの高度な機器から家電製品まで、そこに使われている半導体は、ときには過酷な環境で使われるため、回路を載せる基板の材料には特別な性能が求められます。特にモータや充電器などのコントロールに使われるパワー半導体は、密集した回路に大きな電流が流れ込み、高熱が発生します。その熱密度(単位面積当たりの熱量)は原子炉以上で、どんどん熱を逃がさないと動作しなくなるほどです。
熱を逃がす素材としては金属が一般的ですが、金属は電気を通してしまうため、基板の材料には使えません。そこで注目されているのが、「セラミックス」です。

理想的な半導体材料

セラミックスとは、陶器など、金属でもプラスチックなどの有機物でもない無機材料を指します。半導体に使われるような高機能なセラミックスは、「ファインセラミックス」と呼ばれます。中でも「窒化アルミニウム」という物質は半導体の材料としては理想的です。アルミニウムが窒素とくっつくことで金属ではなくなり、ファインセラミックスとして扱われます。金属のアルミニウム並みに熱が逃げやすく、かつ厚さ1ミリで1万ボルトを遮断できるほどの電気を通さない性質があります。
それを作るときに、酸化イットリウムという助剤を加えて焼き固めますが、鉄鋼炉よりも高い1800℃という温度が必要で、通常の工業設備では対応できないという課題があります。

難しい製法をクリア!

そこで助剤に酸化カルシウム、ホウ素も加えることで、1600℃以下まで下げることに成功しました。この技術により、高機能な半導体が普及すれば、さまざまな製品の性能が上がることが期待できます。
また、窒化アルミニウムは、半導体基板以外にも用途が検討されています。例えば、無色透明という特性を生かして中に蛍光する元素を閉じ込めることで、劣化しにくい蛍光塗料などへの利用が考えられます。世界を豊かにする素材になる可能性があるのです。

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東京都市大学 理工学部 応用化学科 准教授 小林 亮太 先生

東京都市大学 理工学部 応用化学科 准教授 小林 亮太 先生

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無機材料化学、材料工学

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メッセージ

記憶力の高い高校生のうちに、すべての科目をきちんと勉強するとか、理系に興味があるなら日ごろから素材の違いについて関心を持つなど、積極的にたくさんの知識を蓄積してください。大学に行って0の状態で学ぶのと、1つでも足掛かりとなる知識があるのとでは、理解の度合いが全く違います。忘れていたとしても「あのとき学んだこととつながっている!」と思い出して、霧が晴れたようになるのです。私が出会う一流の研究者の方たちも、専門知識だけでなく幅広い教養を持っておられるなと感じています。

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2029年に100周年を迎える東京都市大学は2009年に武蔵工業大学から校名を変更。武蔵工業大学時代の伝統を引き継ぎつつ、自動車、エネルギー、建築、情報といった理工学分野に加え、環境、IoT、メディア、教育など数多くの専門分野を網羅する総合大学として成長を重ねています。今後も東急グループの一員としての強みを生かし、産学連携や地域社会との共同研究を積極的に進めつつ、未来の都市生活を創造し、そのなかで能力を発揮できる専門性と実践力を養成する「都市の総合大学」として、たゆまぬ発展を続けていきます。