留学はキャリアにどう影響するのか 留学の効果を科学する

短期留学がキャリアを左右する
海外への留学といえば、語学力を高めたり、異文化に触れたりする体験を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし近年の研究では、そうした側面にとどまらず、留学が将来のキャリア選択にも影響を与えることが明らかになっています。例えば、わずか1カ月程度の短期留学であっても、就職時に日本の上場企業よりも外資系企業を選ぶ学生が増えるなど、進路に明確な違いが見られています。大学4年間を過ごすような長期の留学に比べると短い滞在に思えるかもしれませんが、実際にはその経験が将来の選択に大きなインパクトをもたらしているのです。
留学の効果をどう測る?
このような研究で重要なのは、「なぜ違いが出るのか」を科学的に説明することです。一般的に、留学する学生としない学生の間には、経済的な背景や家庭環境などに差があることが多く、単純に比較すると、そうした要因の影響を排除できません。そこで先の研究では、留学参加をくじ引きによって決定する大学の留学プログラムを調査対象としました。この方法により、留学する学生としない学生の属性がほぼ同等であると仮定でき、留学経験そのものが就職先の選択に与える影響を分析することが可能となりました。教育には、一定の費用と時間をかけて、それに見合う成果を得るという側面があります。留学の経済的なリターンを明確にすることで、教育投資としての費用対効果が見えてきます。
これからの留学と日本の課題
今、日本では教育の国際化が進んでいます。日本から留学する人たちも増えていますが、参加しやすい短期的な留学に偏る傾向があります。
留学は決して安い投資ではありません。その費用対効果を含めて、留学の効果がより明確になれば、多くの人が自分に合った時期や内容の留学を選びやすくなるでしょう。
留学の経験をより充実したものにするためにも、多くの分析が期待されています。それには、関連するデータを整備し、多くの人がそれを入手し分析できるような仕組みを作る必要があります。
参考資料
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