講義No.15621 外国語学

添削の方法は学びにどう影響するのか? 外国語学習を科学する

添削の方法は学びにどう影響するのか? 外国語学習を科学する

よりよい外国語教育のあり方を探る

外国語教育学は、言語学、心理学、教育学など複数の分野が交わった比較的新たな学問です。外国語学習をよりよく支援する方法を探るためには、さまざまな視点が考えられます。例えば作文の「添削」の効果を検証した実験があります。学習者をA、B、Cの3グループに分けて、それぞれドイツ語で作文を書いてもらいます。Aグループには、間違っている箇所をすべて修正して返します。Bグループには、文法の間違いは「G」などヒントとなる記号だけを与えます。Cグループは誤っている部分に下線だけを引いて返します。

添削は大まかでもいい?

作文課題と添削を何度かくり返して、文法・表現・つづりなどの誤り率の推移を調べ、グループ間で比べました。すると3グループとも誤り率に有意差はなく、添削は細かくても大まかでも差がない、という結果が出ました。差が出なかった理由を確認するため、学習者へのインタビュー調査も行いました。するとAグループでは単純作業のように添削の内容を反映していることがわかりました。一方、B・Cグループは、間違いの原因を自分なりに考えながら、辞書などを引いて作文を書き直していました。その結果、B・Cグループでは、より深い学びが起こっていたのです。また面白いことに、「勉強になりました」と語っていたのは、単純作業の傾向の強いAグループの人たちでした。こうした実験結果は、教育現場で働く教員にとって、教え方のヒントになるでしょう。

これからの外国語教育

従来の日本の外国語教育は、読む・書く・話す・聞くといった技能の向上が中心でした。しかし外国語学習を通して、批判的思考力や協働能力を高めることも重視されるようになってきています。そのため大学では、社会的な課題についてドイツ語で議論するといった授業も行われています。AIの発達がめざましい現代にあって、外国語でじかに人と話してコミュニケーションできる人は、今後ますます希少価値を持った貴重な人と見なされるようになるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

南山大学 外国語学部 ドイツ学科 教授 太田 達也 先生

南山大学 外国語学部 ドイツ学科 教授 太田 達也 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

外国語教育学、応用言語学

先生が目指すSDGs

メッセージ

日本語と英語さえできれば、世界のだいたいのことがわかるのでしょうか。じつは世界の人々のうち約5分の4は英語を話しません。また、世界ではモノリンガル(1つの言語しか話さない人)よりも2つ以上の言語を話す人の方が多いです。多言語を話す人(マルチリンガル)は、世界を見る窓を複数持っているため、異文化に対する感受性や複眼的な思考力が高いと言われています。あなたも大学で日本語・英語以外のもう1つの言語を身につけ、留学してさまざまな人と交流し、世界をより多角的に見る視点をもったマルチリンガルになりませんか?

先生への質問

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南山大学は、人文学部、外国語学部、経済学部、経営学部、法学部、総合政策学部、理工学部、国際教養学部の全8学部18学科を擁する、中部地区を含む西日本唯一のカトリック総合大学です。海外からの留学生も多く、国際性豊かなキャンパスです。
多くの卒業生が製造業や金融業、流通業など、世界規模・全国規模の企業で生き生きと活躍しています。また、外国語運用能力と国際感覚を生かし、航空関連や外国企業などの国際舞台で活躍する卒業生も多数。こうした卒業生のネットワークを生かしたキャリアサポートも万全です。