脳機能をモデル化して解く、脳が情報を処理する方法

人が行動するとき脳はどう計算しているか
ロボットのアームに物体をつかませることを考えてみます。ロボットはカメラで物体の位置の座標を確認し、アームをどこまで動かすのか、関節は何度傾けて、モーターをどのくらい回転させるかなどを計算して物体をつかむでしょう。つまりカメラからの情報の「入力」から計算して、アームの動きが「出力」されるわけです。
では私たちが目の前にある物体を手に取るときには、脳の中でどのような計算が行われているのでしょうか。網膜に映った(入力された)物体の情報は、まず後頭部にある視覚野で処理されます。その後、頭頂葉で目の動きに影響されない体の外部の座標に位置情報を変換し、運動野に送られて実際の手の動きが出力されます。数式を使ってこうした一連の情報処理をモデル化し、脳の機能に理論的にアプローチするのが計算論的神経科学です。
人の行動も物理の法則で
人の脳の機能を数式でモデル化するのは意外に思われるかもしれませんが、実は人間の運動と数式には親和性がみられます。物理には、物体が運動するとき労力が最小になるような経路を取る「最小作用の原理」という数学的な法則があります。一方で人間の運動も、なるべくエネルギーを使わないような動き方をする「最適制御」という、ほぼ同じ数学で説明することが可能なのです。そこでまず人間の行動を数学的に説明し、その上で脳がどのように最適制御の計算をしているのか理解しようとしています。
多角的なアプローチで脳の機能解明を
従来の脳科学は、ほとんどが実験科学だといえます。例えば、脳の活動を画像化するfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使うと、脳の活性化した場所がわかるため、さまざまな行動や認知と脳の場所とを関連づけることができます。しかし、脳の機能の場所がわかっただけでは脳の理解はできません。脳の仕組みをアルゴリズムとして考える計算論的神経科学は、別角度から脳に迫る学問として期待されます。
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