xy≠yxの世界で「描けない図形」を探究する

代数幾何学とは
数学には「代数幾何学」という分野があります。日本で盛んに研究されており、数学のノーベル賞と呼ばれる「フィールズ賞」を何人もの研究者が受賞しています。
代数学はx、yなど文字式の計算の性質を、幾何学は図形の性質を調べる学問です。二つを合わせた代数幾何学は、文字式と図形の関係を研究します。例えば、y=x²を満たすx、yの点を座標上に並べると、原点を通る放物線という図形が描けます。しかし、これが描けるのは、座標上のx、yはすべてxy=yxが成り立つ、つまり掛ける順序を入れ替えても結果が同じになる「可換」という性質があるからなのです。
描けなくても「図形」
一方で、代数学にはxy≠yxとなる「非可換」な世界もあります。例えば、いくつかの数字を縦横に並べてかっこで囲んだ「行列」がありますが、行列同士を掛け合わせる順序を入れ替えると結果が変わります。そうした非可換な世界で、y=x²を満たすx、yを集めても放物線は描けませんが、それを「図形」と解釈するのが「非可換代数幾何学」です。
代数幾何学に非可換の世界を持ち込んで代数学・幾何学双方を深める非可換代数幾何学は、さまざまな数学の概念を組み合わせて研究されています。その一つが、今、数学界でブームといえる「圏」で、「関係」に着目した概念です。
ほかの分野の知識の応用
例えば、「6の約数」という集合の中で「aはbを割り切る」という関係を「a→b」とすると、1→1、2→6など、要素同士の対応が表せます。その対応を全部集めると「6の約数の圏」になります。このように、「圏」はさまざまな対象から作られます。非可換代数幾何学の対象から作られた圏とほかの数学分野で作られた圏とが構造的に似ていれば、ほかの分野の知識を非可換代数幾何学に応用したり、非可換代数幾何学をほかの分野に応用したりすることができ、理解が深まるのです。
また、非可換代数幾何学は圏を通して数理物理、特に弦理論と関係しており、その研究は物理学の発展に貢献する可能性もあります。
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