講義No.15751 教育

「溶ける」を見えるようにする 理科の学びをつなげる教育研究

「溶ける」を見えるようにする 理科の学びをつなげる教育研究

「溶けた」は本当に理解できているのか

食塩を水に溶かして透明になった状態を見て、子どもたちは「食塩は均一に溶けている」と答えます。しかし、時間がたった食塩の状態を想像させると、「食塩は下の方に沈んでいる」と考える例が少なくありません。溶けて見えなくなってしまうと、水の中で何が起きているのかを具体的に想像できず、物は下に落ちるという日常経験で補って理解してしまうためです。この「わかったつもり」が、理解を妨げる要因になります。

「わかったつもり」をどう乗り越えるか

「溶けた」と答えられても、水の中で何が起きているかを具体的にイメージできていなければ、本当に理解したとは言えません。この誤解を乗り越えるために有効な教材として、入浴剤に含まれる色素があります。粉末を水に入れると、かき混ぜなくても色が徐々に広がり、短時間で全体が同じ色になります。子どもたちは目の前で溶けていく過程を観察でき、変化の途中が可視化されたことで、水の中で物質がどのように存在しているのか理解しやすくなります。
理科の学習では、授業直後には理解できていても、時間がたつと元の考え方に戻ってしまうことがあります。しかし、溶ける過程を可視化した授業では、理解が長期間維持される傾向が見られました。

学びを断片にしない理科教育へ

ただし、理解が定着しても、次の学習につながらなければ十分とは言えません。小学校で学ぶ溶解と、中学3年生で学ぶイオンが、学習者の中で切り離されて理解されてしまう場合があります。溶解については食塩の粒で説明し、イオンについてはナトリウムイオンと塩化物イオンで説明するなど、同じ現象を異なるものとして捉えてしまうのです。
新しい概念を学んだあとに、過去の学習内容に立ち戻り、同じ現象を新しい視点から捉え直すという設計が必要です。溶解を見える形で捉える経験は、学びを一本の流れとしてつなぐ手がかりになります。小学校から高校まで見通し、理解を積み重ねていく理科教育が求められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

信州大学 教育学部 理科教育コース 助教 藤森 隼一 先生

信州大学 教育学部 理科教育コース 助教 藤森 隼一 先生

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理科教育学

メッセージ

理科の学びで大切なのは、「なぜこうなるんだろう」という疑問を持ち続けることです。私自身、小学5年生の時に食塩を溶かす実験で「こんなにたくさん溶けるんだ」と感動した経験が、今の研究につながっています。日常生活で感じた「すごい」「不思議だ」という感覚を逃さず、ふとした疑問や心が動いた瞬間を大事にしましょう。大学生に溶解の実験を見せても「わあ、すごい」と驚きの声が上がります。そういった瞬間が、もっと知りたいという気持ちを生み出し、学びを深めていく原動力になるはずです。

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