「溶ける」を見えるようにする 理科の学びをつなげる教育研究

「溶けた」は本当に理解できているのか
食塩を水に溶かして透明になった状態を見て、子どもたちは「食塩は均一に溶けている」と答えます。しかし、時間がたった食塩の状態を想像させると、「食塩は下の方に沈んでいる」と考える例が少なくありません。溶けて見えなくなってしまうと、水の中で何が起きているのかを具体的に想像できず、物は下に落ちるという日常経験で補って理解してしまうためです。この「わかったつもり」が、理解を妨げる要因になります。
「わかったつもり」をどう乗り越えるか
「溶けた」と答えられても、水の中で何が起きているかを具体的にイメージできていなければ、本当に理解したとは言えません。この誤解を乗り越えるために有効な教材として、入浴剤に含まれる色素があります。粉末を水に入れると、かき混ぜなくても色が徐々に広がり、短時間で全体が同じ色になります。子どもたちは目の前で溶けていく過程を観察でき、変化の途中が可視化されたことで、水の中で物質がどのように存在しているのか理解しやすくなります。
理科の学習では、授業直後には理解できていても、時間がたつと元の考え方に戻ってしまうことがあります。しかし、溶ける過程を可視化した授業では、理解が長期間維持される傾向が見られました。
学びを断片にしない理科教育へ
ただし、理解が定着しても、次の学習につながらなければ十分とは言えません。小学校で学ぶ溶解と、中学3年生で学ぶイオンが、学習者の中で切り離されて理解されてしまう場合があります。溶解については食塩の粒で説明し、イオンについてはナトリウムイオンと塩化物イオンで説明するなど、同じ現象を異なるものとして捉えてしまうのです。
新しい概念を学んだあとに、過去の学習内容に立ち戻り、同じ現象を新しい視点から捉え直すという設計が必要です。溶解を見える形で捉える経験は、学びを一本の流れとしてつなぐ手がかりになります。小学校から高校まで見通し、理解を積み重ねていく理科教育が求められています。
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