「走りにくい道」の方が安全? 歩行者を守る道路のデザイン

道路は誰のためのもの?
車がたくさん走る大きな道の横断歩道で、急いでいるときに赤信号で長く待たされて焦ったり、横断中に右折車が来てヒヤリとしたりした経験はありませんか?
歩行者が感じるこのような負担は、今まであまり注目されてきませんでした。なぜなら、自動車が増えてきた1960年代頃から、道路は「車を安全に、渋滞なく流す」ことを重視して設計されてきたからです。その結果、歩行者の心理的な負担への配慮は十分とはいえないのです。しかし近年は、「道路は人のためにあるもの」という考え方のもと、車だけではなく歩行者も快適に移動できる道路空間をどう設計するかが重要なテーマになっています。
「安心」と「安全」は違う
道路において大切なのは、安全に通行できることです。しかし、交通事故が起きないという客観的な安全性と、心地よく通れるという主観的な安心感は、必ずしも共存しません。
例えば、生活道路で歩行者が安全に通行できるよう、道路にハンプというかまぼこ状の盛り上がりを設置して車の減速を促すことがあります。ドライバーにとっては走りにくさを感じますが、これにより周囲への注意が高まり、結果として安全性が向上するのです。このように、あえて注意を促すような設計を取り入れることで、道路全体の安全を確保するという工夫もなされています。
歩行者の行動を分析し、より快適な道路へ
安全な道路設計には、歩行者の行動分析が不可欠です。実際の道路での実施が難しい実験は、VRを用いて検証します。被験者にヘッドマウントディスプレイを装着して仮想空間上の横断歩道を歩いてもらい、どこに注意を向けるのか、適切なタイミングで渡れるかといったデータを集めていきます。
こうした実験で得た知見と、現地調査などの結果を組み合わせながら、横断歩道を数メートル移動する、右折車両の待つ位置を少しだけ前に出すなど、細かな改善案を検討します。こうした小さな対策を積み重ねることが、歩行者の安心・安全につながっているのです。
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名古屋大学 工学部 環境土木・建築学科 教授 井料 美帆 先生
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