生活の縁の下の力持ち! 「橋」の研究

生活の縁の下の力持ち! 「橋」の研究

社会のインフラを支える学問

日本は地震などの自然災害が多い国です。また、各地にあるインフラの老朽化も進みつつあります。こうした状況の中で、土木工学は今の日本が抱えている社会的な課題を解決するための重要な手段の一つです。橋を研究対象にする「橋梁(きょうりょう)工学」では、さまざまな実験を行うことで、よりよい部品や素材の開発、そして橋の設計を考えていきます。構造物は時間とともに耐久性が下がってしまうため、修理や補強も必要です。FRPという繊維で強化されたプラスチックも、橋を補修する素材として研究が進められています。

奥深いボルトと接合の世界

橋はさまざまな材料で作られていますが、中でも多くの橋で使われている素材が鉄です。一般的な橋の製作では、工場で部材を作って船などで現場に運び、部材同士をボルトでつなぐという方法で行われています。このようにボルトは、部材と部材をつなぎあわせる重要な役目を果たしています。部材同士をつなぐ方法は大きく2つあります。「摩擦接合」という手法は、部材の接続部分を両側から板で挟んでボルトで締めることで、摩擦力によってつなぐ方法です。それに対して「引張接合」は、橋の部材の接続面同士で直接ボルトを締めてしまう方法です。引張接合は設計が難しいため摩擦接合ほどは使われていませんが、ボルトの引張力によって高強度の接合が可能です。

アルミの可能性

アルミは軽量でありながらそれなりに強度もあるという特徴を持つ材質で、家の窓のサッシなどによく使われています。そんなアルミには変形しやすいという欠点があるため、日本では橋には使われていません。アルミ素材で一般的な道路橋を作っても、国土交通省が定める「たわみの制限」に引っかかってしまい、実用レベルには達しないのです。しかしその軽さゆえに、災害時に橋が流れて使えなくなってしまったときに簡単に掛けられる、緊急橋梁としての大きな可能性を秘めています。実用可能なアルミの橋の開発も、これからの課題です。

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先生情報 / 大学情報

富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン学科 准教授 鈴木 康夫 先生

富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン学科 准教授 鈴木 康夫 先生

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構造工学、橋梁工学、維持管理工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は神戸出身で、当時は世界最長のつり橋だった明石海峡大橋の建設風景をずっと見ていました。橋梁工学をめざすきっかけになった、忘れられない原体験です。また高校時代の1995年、阪神淡路大震災で橋がバタバタと倒れていくショッキングな出来事も体験しました。橋がなくなると人々の生活が途端に不便になるのを実感しました。暮らしに関わる重要な仕事であるところに、ぜひ魅力を感じてほしいです。また、今のうちからいろいろなことに興味を持ち、とことん調べる習慣をぜひ身につけてください。

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