アジアの途上国における妊産婦の健康向上をめざして

アジアの途上国における妊産婦の健康向上をめざして

アジアの途上国が抱える医療問題

日本では、必要な医療を原則として誰もがいつでも清潔な病院で受けることができます。しかし同じアジアにあっても医療体制が非常に脆弱(ぜいじゃく)な途上国では、感染症のまん延や子どもの高い死亡率など医療に関する問題は少なくありません。母子保健もその一つです。例えば妊産婦の死亡率をみると、日本では10万人あたり3人前後であるのに対し、アジアの中でも医療の遅れが目立つラオスでは100人以上の妊産婦が毎年亡くなっています。
こうした途上国の医療水準を上げるために、母子保健や女性の健康に関する調査研究が行われています。

妊婦健診を受診しない背景

妊婦健診は妊婦や胎児の健康を維持するために重要な健診で、WHOは8回受診することを推奨しており、日本では多くの人が10回以上受診しています。ところが、ラオスでは約70~80%の人が4回しか受診していません。受診回数が少ない人たちについて調べてみると、例えば病院へ行く車がないことや、受診のために仕事を休むと収入が減ってしまうといった背景が見えてきます。こうした現状を把握して国にフィードバックすることが、医療政策を改善していくために必要です。また、今なお健康に対しては科学的に不適切といえる風習が行われているため、正しい教育も重要課題です。

途上国の産後うつ予防をめざす

産後うつは自殺にもつながりかねない深刻な精神疾患で、日本ではここ20年ほどで理解が進み、妊娠中からリスクのある人に支援する動きが根付いてきました。しかし、途上国では今も精神疾患が命にかかわることが認識されていません。日本で産後うつのリスクがある人は10%程度ですが、ラオスの首都の病院でスクリーニング検査を行ったところ、約30%の人に産後うつのリスクがあることがわかりました。途上国では精神科医の数も圧倒的に不足しているため、産婦人科医や助産師によるカウンセリングなど限られたリソースでうつを予防できないか、検証が進められています。

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先生情報 / 大学情報

名古屋大学 医学部 医学科 社会生命科学講座 医療行政学 教授 山本 英子 先生

名古屋大学 医学部 医学科 社会生命科学講座 医療行政学 教授 山本 英子 先生

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医療保健学、産婦人科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は高校2年生のときに産婦人科の医師をめざそうと決めたのですが、その当時は、医学部を卒業した後に病院で働く医師以外の進路があることを知りませんでした。しかし、実際には国際保健をはじめいろいろな仕事があり、活躍の場も日本だけではなく国境を越えて世界に広がっています。医学部に入って医師になることは、将来さまざまな選択肢が開けるということなのです。ぜひ医学部で学び、途上国の人たちにも手を差し伸べ、世界全体が発展して人類がみな健康になれるよう貢献してほしいです。

先生への質問

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名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。